JR東日本の各駅には「接近メロディ」はあまり導入されていない。その理由について、具体的な事情を考察。
音楽が流れるのはあくまでも列車出発の際の発車メロディのみ。列車が到着する際の入線音がある駅も一部存在するが、その数はごくわずか。しかもバラエティー豊かではなく単調な音。放送前のATOS音のみの駅が大半。
発車メロディの面ではかなり積極的な反面、接近メロディに関しては消極的。JR西日本や京浜急行電鉄とは対照的。
接近メロディに消極的な3つの理由
JR東日本で接近メロディが少ない背景 | |
主な理由 | 詳細な内容 |
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入線ベルの歴史がない | 列車到着時に駅構内へ入線する際にベルを鳴らす文化は関西で普及していたが、首都圏では発車時のみしかなかったことが影響。 |
過密ダイヤが多い | 朝夕のラッシュ時をはじめ、首都圏は過密ダイヤの路線が多いため、接近メロディがあると鳴っている時間が多くなりすぎてしまう。 |
制作コストの削減 | 発車メロディに比べて接近メロディは曲が長いため、制作コストが高くなる。駅数が多いJR東日本が駅ごとに異なる音楽を使用するのは困難。 |
JR東日本において、電車の入線を知らせる「接近メロディ」が導入されていない理由としては、上記の3つが挙げられる。
JR西日本や京浜急行では、電車が駅に入線する際には音楽が流れ、これが「接近メロディ」である。電車がホームに入ってくる警告音代わりになっている。
JR東日本は電車の発車を知らせる「発車メロディ」に積極的に力を入れている。駅ごとに異なる音源を使用し、一部駅はその地域にゆかりのある「ご当地メロディー」を採用している。
一方、到着音が鳴る駅はかなり少ない。放送の前にATOS接近音が鳴るだけにとどまる。
入線ベルの歴史がない
今のJR東日本が管轄する首都圏地区では、国鉄時代から元々「入線ベル」が使用されてこなかった。あくまでもあったのは「発車ベル」のみ。列車の到着は放送のみだった。
それに対して、JR西日本が管轄する近畿地区では入線ベルが広く使用されていた。電車の乗客にとっても、以前から発車ベルがなかったということで、今でも発車メロディがほとんどない反面、接近メロディが使われている理由はここにある。
首都圏は発車ベルが長年使用され続けた一方、近隣住民からの苦情があったことで、より不快に感じないメロディーに移行して、今のような発車メロディが普及した。
発車時と入線時のどちらでベルを鳴らすかという点で歴史が違ったことが、JR東日本で接近メロディの導入が進んでいない理由の1つだろう。
過密ダイヤが多い
JR東日本の管轄する首都圏は全国で最も電車の運行密度が高い「過密ダイヤ」となっている。
朝夕の通勤ラッシュとなれば、東京近郊の路線はどこも2,3分に1本走っている状態になる。線路容量の限界まで電車を走らせないと、乗客全員を輸送できないからだ。
ここで「接近メロディ」が存在すると、次から次へとやってくる電車が到着するたびに鳴らさなければならない。
発車メロディと比較しても接近メロディが鳴る時間は長いことで、ほとんど鳴り続けるような状態になると想定される。
発車メロディもあることを考えると、乗客にとってはどちらが発車メロディで、どちらが接近メロディのか区別がつきにくくなる。
過密ダイヤの中での混乱を避けるためにも、入線時はサイレントにすることが好ましいと考えられた結果と予想できる。
制作コストの削減
接近メロディの制作には費用が発生する。作曲する費用、その使用料(ライセンス料)、さらには放送設備の設置費用が生じる。
すでに発車メロディが導入されているが、これに加えて接近メロディも追加するとなると膨大なコストになる。
しかも接近メロディは発車メロディよりも1曲当たりの時間が長いため、制作コストが割高になる。
駅ごとでそれぞれオリジナル音源を使用するとなれば、コスト面では大きなデメリットになるのは確か。
これまでも入線音なしでやってこれたこと、過密ダイヤで電車が絶えず行き来している状態のことを考えると、制作コストをかけてまで行うことではないと考えるのが自然。
お金に関する事情もあるのは完全に否定できない内容であるのは確か。
JR以外も接近メロディ無しが多数
ところで、首都圏ではJR東日本以外の鉄道事業者でも「接近メロディ」には消極的な例が多い。
入線メロディとして使用しているのは京浜急行電鉄のみ。
到着放送の予告音として使用している鉄道会社は、小田急、京王、京成がある。しかし、これら3社はいずれも一部の駅でしか使用していない。
予告のためというよりも、地元からの要請にこたえるためという点の方が大きい。つまり、簡単に言えば「飾り」のようなものに過ぎない。
反対に発車メロディには積極的に導入しているところが目立つ。
東京メトロ、都営地下鉄、東武鉄道、西武鉄道、横浜市営地下鉄は発車メロディを導入していて、東急、京王、京成は発車ベルを使用している。
首都圏=発車時に鳴らすという方法が根付いていることは無視できない。
他の路線の発車メロディの導入状況
<JR東日本の路線毎の発車メロディ> | |
地域 | 発車メロディ導入の路線 |
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東京エリア | 山手線、京浜東北線(根岸線含む)、中央線快速、中央総武緩行線 |
神奈川方面 | 東海道線、横須賀線、南武線、横浜線 |
千葉方面 | 総武線快速、京葉線、武蔵野線 |
埼玉方面 | 宇都宮線、高崎線、埼京線 |
茨城方面 | 常磐線快速 |
上記ではJR東日本の路線ごとの発車メロディの導入状況について一覧化。