JR武蔵野線に快速がまったく運転されていないのはなぜか。府中本町~西船橋間の単独区間ではすべて各駅停車のみしか走っていない。
直通先の京葉線内でも武蔵野線へ乗り入れているオレンジ色の電車は全駅に止まる。いずれも優等列車の定期運転はない。
かつては「武蔵野線快速」という電車が走っていて、京葉線区間となる西船橋~東京間では快速運転を行っていた。
市川塩浜・葛西臨海公園・潮見・越中島の4駅は通過となっていて、この区間では新浦安・舞浜・新木場・八丁堀にだけ停車していた。
しかし、2013年のダイヤ改正以降は武蔵野線直通列車は各駅停車として運転されるようになった。
武蔵野線=貨物線だから
武蔵野線と他の路線との違いといえば、貨物線という性質が大きい点ではないか。もともとは貨物列車専用の路線として作られた歴史がある。
開業した1970年代から旅客列車は走っていたものの、どちらかというと貨物列車の方が優先されてきた。その合間を乗客が乗る電車が走ってきたという形といえる。
線内には越谷・新座・梶が谷の3つの貨物ターミナル駅が設置されている。そして、東海道本線方面と東北本線方面を結ぶ貨物線として極めて重要な路線となっているのが武蔵野線である。
日中は旅客列車が10分間隔で走っているが、その合間を縫って貨物列車が多数走っている。
そんな状況の中でさらに快速を走らせるとなると、貨物列車が走れる余裕がなくなってしまう。
快速は通過駅が多く、ゆっくり走る貨物列車に追いついてしまうことも予想される。追い越しができる待避線が設置されている駅は少ない。
快速が仮に設定されたとしても、実際には速達性を維持した状態で走らせるほどダイヤに余裕がないのが、貨物列車の多い武蔵野線の事情ではないか。
駅間距離が長いから
さらに、武蔵野線では駅間距離が比較的長い傾向にある。同じ「東京メガループ」を構成する南武線と横浜線では快速が運転されているが、いずれも駅間距離が短い。
各駅停車だけだとこまめに駅に止まるため、所要時間が長くなってしまう。武蔵野線では、それらの路線とは対照的だ。
比較的長い駅間距離ということで、快速運転の需要がそれほど大きくはない。所要時間の短縮化の見込みは低い。
近年は越谷レイクタウン駅や吉川美南駅が開業したことで、駅数が以前よりも増えたが、それでも南武線や横浜線と比較すると駅間距離は全体的に長い。
さらに、乗客自体も短距離利用者が多い。都心直結の路線から武蔵野線を使うという人は多いが、武蔵野線だけを長い距離に渡って乗り続ける人は少数派。
首都圏の郊外を環状線のようにぐるっと回っている形となっているため、短い距離を移動する人がメインという点からも快速運転が行われていない理由の1つとなっている。