鉄道車両の寿命(耐用年数)は新幹線で約15~25年、在来線の通勤型車両で30~40年、特急型車両で25~35年ほどが目安。
いずれも税制上の減価償却の際に計算される法定耐用年数は13年となっている。実際に使用する上ではこれよりもはるかに長い。
JR・私鉄各社に加えて路線の地域によっても異なるものの、おおむねこれくらいの期間で渡って現役で走り続けられる。
主な鉄道車両の耐用年数
鉄道車両の寿命 | |
鉄道の種類 | 耐用年数の目安 |
新幹線 | 15~25年 |
在来線通勤型車両 | 30~40年 |
在来線特急車両 | 25~35年 |
新幹線・在来線通勤電車・特急列車それぞれの耐用年数をまとめるとこのような表になる。
高速運転を行う車両ほど寿命を迎える時期が早く、ふつうの自動車並みのスピードしか出さない電車は寿命が長いことが読み取れる。
新幹線
<新幹線の使用年数> | ||||
型式 | 製造開始年 | 最終製造年 | 最終引退日 | 最終版の使用年数 |
0系 | 1964年 | 1986年 | 2008年 | 22年 |
100系 | 1985年 | 1992年 | 2012年 | 20年 |
200系 | 1980年 | 1991年 | 2013年 | 22年 |
300系 | 1990年 | 1998年 | 2012年 | 15年 |
400系 | 1990年 | 1995年 | 2010年 | 15年 |
700系 | 1997年 | 2006年 | 2020年(JR東海) | 14年(JR東海) |
鉄道車両という1つの括りの中でも新幹線は全体的に寿命が短い。
割り当てられている路線によっても異なるが、おおむね15~25年が上限の目安になる。
在来線とは違って最低でも200km/h以上の高速運転を行うのが新幹線の特徴である。日々スピードを出す都合上、どうしても劣化しやすく引退するのが早い。
さらに、270km/h以上で走る東海道新幹線、山陽新幹線、東北新幹線ではより高速運転をする都合上、寿命が全体的に短い。
現役で走り続けるとしても、途中で車両の機器を更新する必要がある。
最も遅い上越新幹線では30年近く経過する車両もある。それでも30年以上にわたって使用し続けるケースは珍しい。
通勤型電車(在来線)
在来線の通勤型電車は鉄道車両の中でも耐用年数が長い。法定耐用年数は13年で、鉄道事業者による減価償却費の計算でもこれが使われるが、実際にはもっと長い。
JR・私鉄のいずれでも30~40年は寿命を迎える1つの目安である。
ただし、JRの場合は国鉄時代に製造された車両で50年以上も使い続けられている車両もある。113系や115系はすでに60年近くも経過する。
私鉄の場合も他社から譲渡された車両を使う地方の小規模鉄道事業者だと製造から40年以上経過した車両を使う場合もある。
大都市部のJR各社や大手私鉄では30~40年以内には最新型の車両に置き換える例がほとんど。
高頻度運転を行っていることから、運用管理の面も考慮して新型車両を導入して思わぬトラブルの発生の防止、消費電力の削減に取り組んでいる。
物理的な限界というよりも、こうした面を重視した結果によるものが大きい。
50年程度使い続けることは不可能ではないが、安全運行のためには保守点検が必要になる。部品の劣化による修理も途中で必要になる。
これには当然コストがかかり、経年劣化による修理の頻度が上がると最新型車両を投入した方が安くなるのが確か。
特急型車両
在来線の特急型車両は新幹線に比べると寿命を迎える時期が遅い。通勤型車両よりは若干短い。
JRだと25~35年ほどが寿命の目安になる。
最高速度が120~130km/hに設定されていること、一度に入る距離が長いことから、寿命を迎えるのは在来線としてはやや早い。
物理的には40年かそれ以上使い続けることは可能のようだが、座席やトイレなどの車内設備の改修、機器の更新にかかるコスト、消費電力の大きさなどを考えると25年前後をめどに最新型の車両へ置き換えた方が経済的になる。
あまり長い期間に渡って古い旧式の特急車両を使い続けるのももったいない形になる。
こうした点を総合的に考えると、寿命は25~25年が妥当な年数になる。
引退=完全な廃車ではない
ある車両がすべて引退して運転終了したからといって、それがすべて廃車になるかというとそうではない。
物理的に走行可能な車両は東南アジア諸国などに輸出されるケースも多い。
在来線の車両を中心に、インドネシア、タイ、ミャンマー、フィリピンなどへ輸出され、現地の電車として活躍することも結構ある。
中でも1980年代に製造されて引退した車両はインドネシアを中心に大量に輸出されている。
日本国内で運転終了したからといって、その後直ちにスクラップにされるわけでないため、30~40年という目安が物理的な寿命を迎える時期を示すものとは言い難い。
鉄道事業者の経営状況にも影響
鉄道事業者によっても古い車両を使い続けるか否かの判断が異なる。
JR東日本や首都圏をカバーする私鉄各社では比較的新しい車両が割合的に大部分を占めている。
JR西日本や関西都市圏をカバーする私鉄では1960~70年代に製造された車両もまだまだ現役で使われているところが目立つ。
東京一極集中が進む首都圏の鉄道事業者は利用者数が好調なこともあって最新型の車両の導入に積極的。車両の置き換えの目安が短い。
利用者数がそう多くはない近畿地区をはじめとする西日本エリアでは設備投資に使える予算が少ないため、旧式の車両を使い続けなければならないという事情がある。
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