回数券(回数乗車券)の乗り越し精算の計算式は鉄道会社によって異なる。
乗り越し区間の料金を全額支払う「区間方式」と普通運賃の料金に対して不足分のみを支払う「金額方式」の2パターンがある。
JRと大半の私鉄(関西以外)は前者、地下鉄は後者に該当する。
目次
回数券の乗り越し精算の計算式
計算式の種類 | 追加で支払う金額 | 採用事例 |
---|---|---|
区間方式 | 乗り越し区間の運賃丸々全額 | JR、私鉄のほとんど |
金額方式 | 普通運賃の料金に対して不足分の金額 | 地下鉄、関西の私鉄、東急電鉄 |
回数券の乗り越し精算の計算式の具体的な例を挙げる。
今回は以下を事例とする。
手持ちの回数券の券面は「A駅→B駅」で、B駅からC駅まで乗り越す場合。
区間方式|乗り越し区間の運賃を支払うタイプ
計算式は次の通りになる。
B-C区間の料金=追加料金
例:手持ちの回数券の区間:渋谷→新宿。池袋まで乗り越す場合。
追加料金:160円(新宿→池袋の普通乗車券運賃)
大人普通運賃は
・渋谷→新宿…160円
・渋谷→池袋…170円
となっている。
最初から通しで渋谷→池袋の区間を普通乗車券で利用した場合は170円なのに対し、乗り越し精算では追加で160円かかるため、実質的に合計で320円の負担になる。割高な料金になってしまう。
一旦下車した場合と同じ料金でもある。渋谷→新宿の回数券で池袋まで乗り越す場合の例だと、新宿駅で一旦改札外で出た場合と実質的に変わらない。
新宿駅で改札の外に出て、その後乗車券を購入しても、回数券で池袋駅にて乗り越し精算を行った場合でも違いはまったくない。
乗り越し区間の普通運賃をまるまる支払うこととなるため、メリットは特にないどころかデメリットが大きい。
ただし、区間によっては逆に割安になる事例もあるため、一概に高くなるとは言い切れない。
JRと私鉄(東急と関西の私鉄以外)ではこのパターンを採用している。全国的にはこれが主流といえる。
金額方式|差額の運賃のみを支払うタイプ
計算式は次の通りになる。
(A-C区間の料金)-(A-B区間の料金)=追加料金
例:手持ちの回数券の区間:170円区間(渋谷→永田町を想定)。大手町まで乗り越す場合は以下になる。
追加料金:200円-170円=70円
大人普通運賃は
・永田町→大手町…170円
・渋谷→大手町…200円
となっている。これの差額が追加で支払う金額。
この例だと東京メトロだが、回数券は前述のような区間(〇〇駅~××駅)ではなく、金額ごと(…円区間)に発売されている。
地下鉄と関西地区の私鉄、東急電鉄ではこのパターンを採用。
回数券の券面記載の種類で異なる
区間方式…回数券は記載の「A駅→B駅」以外の区間では使用不可。
金額方式…回数券に記載の「…円」の区間ならどこの区間でも使用可能。
※どちらも途中下車は可能なが前途無効に。
区間方式の回数券では、券面には「A駅→B駅」と記載されている。完全に乗車駅と降車駅が指定されている。
たとえ運賃が同じであったとしても、記載された区間以外のところでは使えない。
上記の例だと、渋谷→新宿の回数券では、渋谷→新宿でしか使えない。同じ運賃になるはずの新宿→池袋では使えない。
金額方式の回数券では、券面には「…円区間」と記載されている。該当する運賃が適用される区間であれば、乗車駅と降車駅はどこでも構わない。
運賃さえ同じであれば、追加料金なしで同じ回数券を使用できる。
東京メトロ170円区間分の回数券だと、渋谷→永田町、永田町→大手町のいずれでも使用可能。
乗車券と回数券では乗り越し精算の計算方法は異なる
普通運賃の料金になる乗車券と回数券では乗り越し精算の計算方法は異なる鉄道会社がほとんど。
「区間方式」を採用する鉄道事業者では、回数券では乗り越し区間の運賃丸々徴収される場合でも、乗車券では差額のみになる。
首都圏の各鉄道会社だと、以下のように違う。
鉄道事業者 | 普通乗車券 | 回数乗車券 | 定期券 |
---|---|---|---|
JR東日本 | 金額方式(100km以内) 区間方式(101km以上) |
区間方式 | 区間方式 |
東武鉄道 | 金額方式 | 区間方式 | |
京成電鉄 | 区間方式 | ||
西武鉄道 | 区間方式 | ||
京王電鉄 | 区間方式 | ||
小田急電鉄 | 区間方式 | ||
東急電鉄 | 金額方式 | ||
京浜急行電鉄 | 区間方式 | ||
相鉄 | 区間方式 | ||
東京メトロ | 金額方式 | ||
都営地下鉄 | 金額方式 | ||
横浜市営地下鉄 | 金額方式 |
JRの場合は、片道100km以内なら乗車券の乗り越し精算は「金額方式」。私鉄もほとんどで乗車券の方は「金額方式」が適用。
あくまでも回数券に限って定期券と同じく「区間方式」で乗り越し区間の運賃丸々を支払うパターンが目立つ。
前述の例だと、渋谷→新宿の乗車券で池袋まで乗り越す場合、追加料金は回数券では160円(区間方式)の一方、乗車券は10円(金額方式)にとどまる。
その他、回数券に関する各種のルール
主な項目 | 内容 |
---|---|
購入・発売 | 時差回数券の取扱有無、土日回数券の取扱有無、回数券がない(廃止)鉄道会社 |
利用上の注意点、禁止事項 | 複数人での使用、定期券との併用 |
運賃・料金 | 乗り越し精算の鉄道事業者ごとの計算式、有効期間 |
新幹線回数券(トクトクきっぷ) | 乗り越し精算の計算式、変更の可否と条件、払い戻し |
上記の記事にて回数券に関する条件や注意点について解説。在来線と新幹線では事情が異なり、さらに鉄道事業者でも取り扱い条件が大幅に違う。