北総鉄道は運賃が高い路線としてかなり有名だが、なぜこれほどの水準になってしまったのか。値下げがほとんど不可能なのが現状だが、その背景にはどんな事情が存在するのか。その理由について今回は見てみよう。
運賃がどれくらいのレベルの高さかというと、地方のローカル線並みである。1時間に1本程度しか走っていない田舎の非電化単線で気動車が走る路線だと、料金もかなり高い。
他社と比較してみると
初乗り料金は200円。ただ、ここまでだと決して高いとは言えない。かつての大阪市営地下鉄も初乗りは200円だった。名古屋市営地下鉄では現在も200円に設定されている。
距離が長くなると、北総鉄道の割高さが見えてくる。千葉ニュータウン中央~京成高砂(23.8km)となると760円だ。
並行して走る京成電鉄の場合、同じ距離だとたった370円しかかからない。JRでも幹線で410円、電車特定区間だと390円だ。同じく新しく建設されたつくばエクスプレスでさえも570円である。
それと比べると、北総鉄道の運賃の高さが理解できる。現代の物価が確立されてから建設された北総鉄道だが、運賃は既存の鉄道会社どころか新規開業した路線よりも高い。だから、その値段の高価な点が問題視されていて議論の的となっているのだ。
借金返済が苦しいため、でもなぜ?
北総鉄道の運賃が高い最大の理由は建設費の借金返済が残っているためである。しかも、その金額は膨大なものだ。2017年現在でさえも未だに返済しなければならない借金が約800億円残っている。
建設費の借金がある路線は決して北総鉄道だけではない。しかし、その金額が大きいのは北総鉄道など数社にとどまる。
北総線の建設が計画されたのは千葉ニュータウンの計画が行われたときであり、それは日本が高度経済成長期だった1966年のことである。これは、成田空港の建設が予定されていた時期でもある。
そして、1969年に都市計画として事業が決定され、翌1970円には小室地区で事業がスタートした。
しかし、1973年に起きたオイルショックにより地価が高騰し、用地買収は思うようには進まなかった。建設は次第に滞るようになり、さらに土地代の上昇によって当初予想されていた範囲を超える金額へと膨れ上がった。
特に建設費が高かったのは京成高砂駅 – 新鎌ヶ谷駅間の区間だ。1991年には開業したが、建設当時はバブル経済の最中でもあったため、かなりの資金を費やされることとなった。これにより、建設費の借金は膨大なものとなった理由だ。
一応黒字だが、利用者数が伸びない
もう1つの運賃が高い要因は利用者数が伸び悩んでいる点だ。千葉ニュータウンが構想された当初、北総線沿線の千葉ニュータウン地域には約34万人の人々が住むと計算されていた。
しかし実際にはその4割である14万人しか住んでいない(2015年の統計データ上)。当然ながら、地域の交通手段である北総線を利用する人の絶対数も少なかったわけである。
確かに北総鉄道の営業収支は黒字であり、年間約50億円ほどの利益が上がっている。しかし、その金額に比べて建設費による借金返済が積もっているのも事実だ。
北総線の鉄道利用者数が伸びれば、旅客収入が増えてより効率的に借金の返済が可能になる。しかし、思うようには電車に乗っていないのが現状なため、運賃も高いままの状態となっているわけである。