都営大江戸線の延伸計画の全容について調査してみた。光が丘駅から埼玉県方面まで延ばす案がある。
具体的には、大泉学園町、新座市・清瀬市を経由してJR武蔵野線との接続点(東所沢駅が有力)まで新設する構想が交通政策審議会で答申されている。
実現する可能性に関しては、大泉学園町付近までの延伸計画は事業化される可能性が決して小さくはない。
大江戸線の延伸計画
延伸区間 | 現実性 | 概要 |
光が丘~大泉学園町 | ★★★★★ | 工事着工に向けてある程度具体的な計画あり。東京都内のため、鉄道事業者もある程度積極的。 |
大泉学園町~東所沢 | ★★ | 埼玉県内の区間のため、都営地下鉄として建設するのが困難 |
※鉄道事業者が東京都交通局のため、他県にまたがるのが難しい。 |
都営大江戸線は開業した1991年以来は赤字の状態となっていたが、ここ最近はついに黒字に転換している。
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光が丘~都庁前までの放射状の区間においても、沿線の住民の都心部へのアクセス手段として大江戸線を利用する人が増え、今では路線単独でも収益性が伸びている。
そんな中で、練馬区内の区間の光が丘~大泉学園町の延伸区間の計画は進められている。自治体も早期着工を求めている。
さらに、新座市・清瀬市・所沢市内まで延伸する構想もある。最終的にはJR武蔵野線との接続駅になる東所沢駅まで建設するのがゴールになる。
光が丘~大泉学園町で練馬区の鉄道空白地帯が解消
<実現性が高い理由>
- 該当エリアが練馬区内(東京都内)
- 沿線が人口密集地
- 朝夕の道路の渋滞が深刻
- 23区内で最大の鉄道空白地帯
光が丘~大泉学園町にて大江戸線の延伸区間が開業すれば、練馬区内の鉄道空白地帯はほとんど解消される。
南側には西武池袋線、北側には東武東上線、東京メトロ副都心線が走っているが、いずれもその間の空間は広く、双方の駅に行くにしても路線バスを使うしかない。
大泉学園町は特に東京23区内では最大の鉄道空白地帯といわれている。都心へのアクセス手段はそれでも最終的には鉄道になってしまう。
大江戸線が延伸されれば、それが電車1本で都心まで行けるようになる。周辺の住民にとっては大きなメリットになるのは間違いない。
西武池袋線・東武東上線の混雑緩和も同時に期待される。
>>東武東上線の朝ラッシュの混雑はどれくらいの規模になる!?
この地域は練馬区、つまり東京都内のため鉄道の運行を行うのも東京都交通局になる。第三セクターなどの別会社になる可能性が低く、運賃が大幅に割高になる心配もない。
鉄道新線の始まりとも呼ばれる「交通政策審議会」でも、この都営大江戸線の大泉学園町までの延伸計画はできるだけ早期に建設するのが好ましいと評価されている。
したがって、この計画が中止になって廃案になる可能性は低い。
大泉学園町~東所沢は困難
一方の大泉学園町からさらに延伸し、新座市・清瀬市・所沢市を経由してJR武蔵野線との交点になる東所沢駅まで延伸する計画に関しては、実現性が低いと言わざるを得ない。
<主な問題>
- 都営地下鉄では埼玉県内は管轄エリア外のため運営が困難
- 第三セクターでは収益性が合わない
- 人口密度が小さい
この地域になると、まず沿線の人口が少ない。田園地帯が広がるような地域ではないものの、鉄道として収益を上げていくために必要な人口密集地ではない。
鉄道を新たに建設したところで黒字経営が見込めない可能性が出てくる。これが1つ目の理由である。
2つ目の理由は、予定される地域が東京都ではなく埼玉県内になる点にある。大江戸線は東京都交通局が事業主である。公営地下鉄で東京都という地方自治体が運営している。
埼玉県となると東京都が地下鉄路線を建設して経営していくことには抵抗が大きすぎる。本来の管轄エリアからは離れる。
別の第三セクターが管理していく可能性が高く、事業費が莫大な金額になることが予想され、大泉学園町~東所沢間の単独区間で黒字経営を実現するのは無理がある。
よって、JR武蔵野線の東所沢駅まで大江戸線を延伸されるのは難しい。
人口減少について
ところで、日本は全国的に人口が減少している。東京一極集中という言葉がある通り、23区内に限っては人口がむしろ増え続けている。
しかし、郊外の地域では今後は少子高齢化が急速に進んで人口が減少すると予想されている。
大江戸線の延伸計画に上がっている、大泉学園町~東所沢の間のエリアも例外ではない。
人口が減少する中で鉄道を新しく建設するのは割に合わない。莫大な建設コストとランニングコストがかかるため、開業後はまとまった利用者数が見込める必要がある。
人口問題を考えると、都営大江戸線の埼玉県内への延伸を実現させる必要性が薄くなる。今の社会情勢ではここまで作るのは難しい。