小田急線の登戸から新百合ヶ丘駅までの複々線化を延伸される計画が実現する可能性はどれくらいあるのか。
最も列車の本数が多いのは東京メトロ千代田線と分岐する代々木上原駅から多摩線と分かれる新百合ヶ丘駅までの区間なのは事実。
新宿駅を起点として小田原や藤沢まで走る小田急電鉄では複々線化事業が積極的に行われていて2018年3月に完成した。これにより、事業化されている複々線のための工事はすべて終わった。
だが、その先の新百合ヶ丘駅までの延伸という計画も存在する。町田駅や相模大野駅まで延伸させるべきという意見も存在する。これが実現化する可能性は用地や予算の関係上難しいのだろうか。
代々木上原~向ヶ丘遊園までの約12kmの区間では複々線化の工事が進められていた。
これが完成したことで朝のラッシュのピークの時間帯には現行の1時間当たり27本から36本にまで増発され、輸送力不足の状態はおおむね解消された。
線路が上下線合わせて2本だったのが4本に倍増するため、輸送力が大幅に強化されるのは言うまでもない。
これまでは朝の混雑率のピークが190%近くにまで達していたのが150%前後にまで下がった。
【朝ラッシュ】小田急の混雑の時間帯とは!? 上り・下りを調査
このように、東京都内の区間の複々線化ができたことによるメリットはかなり大きい。新百合ヶ丘駅まで延伸すればさらに電車の増発が可能になる。
そもそもなぜ新百合ヶ丘?
小田急線の中でも一番列車の本数が多いのは代々木上原から多摩線との分岐点である新百合ヶ丘までの区間である。
最もダイヤが過密しているところであるため、複々線化が検討されているわけだ。
区間 | 完成度 | 現状 |
新宿~代々木上原 | 単なる複線 | 千代田線がバイパス |
代々木上原~向ヶ丘遊園 | 100%完成 | 高架・地下の複々線 |
向ヶ丘遊園~登戸 | 3複線 | 用地買収が未完了 |
登戸~新百合ヶ丘 | 単なる複線 | 計画あるが、ほぼ白紙状態 |
4線化のための用地取得が困難であった登戸~向ヶ丘遊園は3線になっているが、小田急側によれば複々線の状態と同じくらいの輸送力が可能とされている。
そのため、まだ単なる複線となっている区間は向ヶ丘遊園~新百合ヶ丘の区間のみといえる。この間には各駅停車のみが停車する3つの駅が存在する。
しかし、朝のラッシュ時にはどうしても運転本数が多いために前を走る各駅停車に後ろを走る急行などの優等列車が追いついてしまってノロノロ運転を余儀なくされる例が多い。
代々木上原~登戸までの区間だけが線路容量に余裕ができてスムーズな電車の運行ができている。新百合ヶ丘までは鉄道の渋滞が発生しやすい。
輸送力を増やして速達性を維持させるためには、新百合ヶ丘駅まで複々線化するのが最も有効的であるのは間違いない。
こうした事情が、小田急の新百合ヶ丘駅までの複々線化の計画が上がっている理由である。
用地買収・予算の都合上難しい!?
しかし、今のところは代々木上原~向ヶ丘遊園までの複々線化で事業は終わるとされている。新百合ヶ丘駅まで延伸させる計画が事業化される見通しはまったく立っていない。
理由としては、まず用地取得が難しい点が挙げられる。登戸~向ヶ丘遊園が暫定3線化されたのは、線路建設のための土地が確保できなかったためである。
- 登戸~新百合ヶ丘の用地取得は困難
- 丘陵地帯で線路のスペースがない
- 連続立体交差事業すら難しい地形
土地取得の難しさであるが、向ヶ丘遊園~新百合ヶ丘についても同じことがいえる。しかも、この区間は丘陵地帯を走るため、線路を追加で建設できる余裕がないのが現状だ。
複々線化させるには、上下2層にするか地下化するしか方法はない。しかも、カーブと勾配が多い区間であるため、高架化も実現が難しい。
予算的にも限界がある。複々線化には用地取得のための費用と線路建設の費用がかかるため、多額の資金を必要とする。
しかも、土地に余裕がない丘陵地帯のため、これまで進められてきた区間よりもさなに高コストになることが予想される。
似たような事例としては、JR中央線や京王線の複々線化プロジェクトが挙げられる。いずれも必要性は高いが、実現には至っていない。
こうした事情から、新百合ヶ丘駅までの複々線化が実現する可能性はかなり低い。計画が白紙化される可能性を否定することはまったくできない。