鉄道の定期券にて経路外のルートを使うことは基本的に禁止。
指定経路ではない路線を使って券面と同一区間のみを利用するのは不正乗車に該当。通学定期券、通勤定期券のいずれも同じ。
ただし、実際の措置は磁気きっぷの定期券とSuicaやPASMOのような交通系ICカードでは異なる。
指定経路外のルートの乗車の可否
定期券の種類 | 指定経路外の利用 | 補足 |
---|---|---|
磁気きっぷ | 不可 | 指定区間内のみ有効 |
ICカード | 実質的に可能 | 運賃計算は最安値経路または定期区間で処理のため |
乗車券とは違って、定期券では経路が指定されている。これは、複数のルートが選択できる鉄道会社のすべてに該当する。
指定経路が入っているということで、定期券を使用する際はその経路しか乗ってはいけないとされている。
複数のルートが選択できるパターンが多い東京メトロでも、以下のようにホームページに記載されている。
質問:改札を通らない乗り換えは、どの経路を使っても構いませんか?
回答:乗車駅から下車駅まで複数経路がある場合は原則として一番安い経路の運賃をいただいておりますが、定期券については経路通りのご乗車となります。
出典…東京メトロ
経路選択自由となっているエリアでも、定期券は話が別で、購入時に指定されたルートで乗ることしかできない。
具体的な例
例えば、新宿→東京の定期券で利用するとする。
通常の乗車券の場合だと、この区間ではJR線だと中央線または山手線のいずれかを選択できる。
定期券では指定経路が定められている。最安値ルートは中央線(快速線)で御茶ノ水駅を経由するルート。
これだと、山手線を利用して新宿~東京間を定期券で移動することは認められていない。内回り・外回りいずれも中央線利用と記載された定期券では不正乗車に当たる。
ところが、この場合の実際の乗車の可否に関しては、磁気券とICカードで異なる。
磁気きっぷ定期券
◎磁気きっぷの定期経路外の乗車
…完全に禁止
※バレた場合は定期券没収+普通運賃の3倍の料金徴収に。
磁気きっぷタイプの定期券では、定期区間とは別の経路で電車に乗るのは完全に不正乗車に該当する。
券面上で指定された経路でしか乗ってはいけないとされているため。
上記の例だと、新宿→東京の定期券で中央線経由のものであれば、中央線でしか移動できない。
ここで山手線を利用した経路では旅客営業規則に反する行為に当たり、不正乗車とみなされる。山手線だけでなく、埼京線など利用した場合も同じ。
指定経路外のルートで定期券を使用して、もし駅員や車掌などの乗務員に見つかった場合は定期券本体が没収され、さらに乗車区間の運賃の3倍の料金を徴収されてしまう。
一方で定期区間に加えて、区間外の部分を乗ることも可能。こちらは乗り越し精算を行うため、定期区間外の利用もOKとなっている。
参考元:旅客営業規則(JR東日本)
ICカード定期券
◎磁気きっぷの定期経路外の乗車
…実質的に可能(公式に認められているわけではない)
※改札外乗り換え、途中下車は不可能。
Suica定期券やPASMO定期券交通系ICカードの定期券でも、公式では経路外のルートの乗車は認められていない。
ただし、磁気きっぷとは違ってICカードは定期券機能だけが付いているわけではなく、通常の乗車券としての機能もある。
あくまでもICカードに定期券機能を追加しただけに過ぎない。
ICカードでは、運賃の計算は経路に関係なく乗車駅から降車駅までの最安値経路で計算される仕組みになっている。
定期区間外の利用も同じ交通系ICカードで乗車することができる以上、定期区間内のみの利用なら、定期券で指定されたルートを使ったとみなされる。
極端な話だと、新宿→東京(中央線経由)の定期券で新宿→横浜まで湘南新宿ライン、横浜→東京まで東海道線で移動しても、ICカードの性質上は最安値計算され、定期券なら「定期利用」として処理される。
ただし、乗り換えの際に中間改札(改札外乗り換えともいう)を通過するようなルートの場合は、その改札のある駅にて下車したとみなされる。
もしこれが定期区間外だと通常の料金が徴収される。
途中下車に関しても、定期区間外の駅を降りると区間外分の運賃を支払うこととなる。
計算方法は、定期券で指定されたルート上の最も近い駅から実際に下車したまでの駅の区間の料金分となる。
あくまでも改札内に入場した駅と出場した駅が同じ場合のみ、経路外のルートでも定期券を使用したとみなされるに過ぎない。
その他、定期券に関する各種のルール
主な項目 | 内容 |
---|---|
購入・発売 | 直通先での継続購入、区間変更、払い戻しの可否(JR) |
利用上の禁止事項 | 通勤定期券の「通勤」目的以外の購入・使用、通学定期券の「通学」目的以外の購入・使用、指定経路外の乗車、使い回し(本人以外の使用) |
運賃・料金 | 乗り越し精算の計算式、回数券との併用、1日の乗車回数の上限 |
上記の記事にて定期券に関する条件や注意点について解説。通常の乗車券や交通系ICカードによる利用の場合とは異なる点が多い。