JR武蔵野線の最高速度は95km/hとなっている。これは国鉄時代から変わらない。なぜ他の路線と比べて遅い水準にとどまっているのか。
JR各線では、国鉄が民営化されてから最高速度の引き上げが順次行われてきた。かつては武蔵野線と同じく95km/hだったが、車両の性能向上などで100~130km/hまで上がったところが少なくない。
最近では、中央線の東京~高尾間にて95km/hから100km/hに引き上げられた。一方、線形が良くて踏切がまったくない武蔵野線では、いつまでも昔のままとなっている。
遅い最高速度のままとなっている現状にはどんな理由があるのか。速達化できない事情がある。
車両は古いものばかり
武蔵野線では、他の路線で使われた車両しか使われていない。つまり、「お下がり」ばかりの電車が走っている。
205系も209系もE231系もすべて他の路線で使われていた。新造されたばかりの電車は一切ない。
E231系は中央総武線各駅停車で使われていた車両が転属してきた。209系はもともとは京浜東北線や京葉線で使われていた。国鉄時代に作られた205系は、もともとは山手線で使われていた。
中古車両ばかりが集まっているため、負荷が大きくなる高速走行には向いていない。95km/hに抑えられている理由の1つなのは確かだろう。
武蔵野線へ転属される前に使われていた路線も、高速運転が行われているところではない。
山手線、京浜東北線、中央総武線各駅停車は最高速度が90km/hということで、武蔵野線よりも遅いスピード。
この点でも、転属先でスピードが出せない理由となっている。仮に高速運転を行うにしても、大きな改造工事が必要になる。コストを抑えるため、最高速度が低く設定されているものと考えられる。
長距離路線ではないため
武蔵野線はまた長距離路線ではない。都心部から放射状に郊外へ延びる路線は、どこも遠距離利用者が少なくない。
都心と郊外をできるだけ短時間で結ぶ必要が大きいため、東海道線・中央線・高崎線・宇都宮線・常磐線・総武線などでは最高速度が100km/h超に設定されている。
武蔵野線は東京メガループの1つを構成する路線ということで、都心部を大きく迂回するような路線図となっている。
都心部から放射状に延びる複数の路線を結ぶという性質が強い。決して所要時間の短縮化が重要視されてはいない。
このように、速達性が求められていない点もまた、武蔵野線の最高速度が95km/hに抑えされている理由の1つではないか。