東海道山陽新幹線では「グランクラス」がまったくない。のぞみ・ひかり・こだまのいずれにもない。なぜ設置しないのか、その理由について考察してみた。
すでに快適性を求めた車両ならグリーン車が設置されている。これは東海道山陽新幹線でものぞみ・ひかり・こだまのすべてで設定されている。
一方の東北・上越・北陸新幹線ではグリーン車に加えてさらに上のグランクラスが設置されている。「新幹線のファーストクラス」といわれる座席だ。
グランクラスが東海道山陽新幹線にない理由
理由 | 詳細な内容 |
乗車率が高い | 利用者数が多いため、座席数が少なくなると輸送力が低下する |
ビジネス客が多い | 出張などのビジネス客が主流で、普通車指定席の利用が最多。上級管理職はグリーン車が主流 |
複数の鉄道会社が絡む | 東海道山陽新幹線はJR東海・JR西日本・JR九州の車両が乗り入れ、運用が複雑 |
グランクラスがない東海道山陽新幹線とすでに導入されている東北・上越・北陸新幹線との違いは上の3つになる。
東海道・山陽は特に「太平洋ベルト」と呼ばれる日本の産業や人口密集地を通る路線ということで、新幹線の利用状況がそれ以外と全く違う。
乗車率が高くて利用者が多い
東海道山陽新幹線はグランクラスがある東北新幹線などと比べると乗車率が終日高い数値になっている。常に多くの乗客が乗っていて、輸送密度が大きい。
>>なぜひかり・こだまの本数が少ない!? 30分に1本だけの理由
グランクラスを設けてしまうとスペースに余裕を持たせるという性質から座席数がかなり少なくなってしまう。
こうなると普通車指定席・自由席がその分満席になりやすくなる。輸送力が低下するため、鉄道会社としても機会損失の原因にもなる。
快適性を求めたグリーン車がすでにあるが、そんなグリーン車でも普段は空席がやや多い。
需要が大きいために常に本数を多くして運転している東海道山陽新幹線では、普通車指定席・自由席の今の供給力が求められる。
ビジネス客が多い
東海道山陽新幹線では平日は特にビジネス客の利用が目立つ。東北・上越・北陸新幹線と比べても旅行客よりも圧倒的にビジネス客が多い印象である。
仕事で新幹線で移動する人は、職場で利用する座席タイプが決められている。たいていの場合は普通車指定席である。
役員のような上級管理職になるとグリーン車に乗ることが認められることもある。とはいえ、基本的には普通車である。
グランクラスに乗ってもOKという職場はほとんど現れない。乗客が多い東海道山陽新幹線では普通車とグリーン車だけで事足りていることも理由の1つと考えられる。
複数の鉄道会社が乗り入れ
東海道山陽新幹線のうち、東海道新幹線(東京~新大阪)はJR東海、山陽新幹線(新大阪~博多)はJR西日本が管轄する。
乗務員や設備の運営管理はそれぞれ別々の鉄道事業者が行うが、車両だけは相互乗り入れを行っている。形式はN700系が主流だが、所属は様々である。
- 東海道新幹線:JR東海・JR西日本の車両が乗り入れ
- 山陽新幹線:JR東海・JR西日本・JR九州の車両が乗り入れ
>>東海道新幹線vs山陽新幹線、違いとは? なぜ異なる路線名なのか!?
さらに、山陽新幹線の場合は九州新幹線との相互乗り入れを実施しているため、JR九州所属の車両も入ってくる。
仮にグランクラスを設置するとなると、JR各社で協議を行って合意に至らなければならない。
一方のグランクラスが設置されている東北・上越・北陸新幹線はJR東日本が単独または導入時は単独だった。
東北新幹線はJR北海道の北海道新幹線へ乗り入れているが、以前はJR東日本単独だった経緯があり、運転区間もほとんどがJR東日本管轄エリア内になる。
北陸新幹線も以前は長野新幹線として開業し、車両の開発もJR東日本が中心のため、JR西日本が関係するとしてもグランクラスを簡単に導入できたと考えられる。