のぞみ号が「全車指定席」でない理由とは!? 自由席の存在意義

のぞみで全車指定席を導入しない理由

東海道・山陽新幹線の最速種別であるのぞみ号が「全車指定席」にはならないのはなぜなのか。自由席が残る理由がある。

東北新幹線や北陸新幹線では通過駅が多い速達型の種別では自由席が一切存在しない全車指定席制を採用している。

一方で日本の大動脈である東海道新幹線と山陽新幹線はのぞみ号でも自由席がすべての列車に設定されている。すべて指定席にはしていない。


なぜのぞみ号は全車指定席にならない?

<全車指定席を導入しない理由>
主な理由 詳細な内容
ビジネス客が多い 仕事で利用する人は指定席利用が多いが、満席でも乗らないわけにはいかない。自由席で立ち乗りでも乗る。
座席指定に時間がかかる 座席指定には時間がかかる。時間に余裕がない人も少なくなく、そんな人のために特急券の購入だけで乗れる自由席を維持。
本数が多い 本数が多いため、特定の列車を狙う必要性が小さい。来た列車に乗るという人も。指定席ではそういうわけにはいかない。
相互直通運転 のぞみ号は東京~新大阪でJR東海、新大阪~博多でJR西日本が運転。全車指定席には2社の同意が必須。

東海道・山陽新幹線ののぞみ号で全車指定席には踏み切らない理由はこれら4つがあげられる。

すでに全車指定席になっている東北・北海道新幹線のはやぶさ号、北陸新幹線のかがやき号との違いでもある。

どこの路線でも今のところは最速種別のみで導入実績があるだけだが、それでものぞみ号はまた別な存在になっている。

>>【休日編】のぞみ自由席の土日祝の混雑状況! 時間帯ごとに調査

>>【平日編】のぞみの自由席の混雑のレベル! 満席になる時間帯とは?

ビジネス客が多い

ビジネス客が多い東海道新幹線

中でも東海道新幹線の東京~新大阪はビジネス客が多い。他の路線に比べても旅行などで利用する個人客よりも圧倒的に仕事の外回りや出張で利用する法人客が多い。

のぞみ号も長距離輸送という性質がある一方、ここでもビジネス客が多い。実際にスーツ姿のビジネスマンが多いのが、平日に乗ればわかる。

ビジネス客でも指定席を利用する人が多いのは確かだが、満席だった場合はそう言うわけにはいかない。空席がないなら立ち乗りでも自由席に乗る。

全車指定席の場合でも座席未指定券で乗るという選択肢があるが、これは空いている指定席に着席するという性質上、運行する鉄道事業者にとっては都合があまり良くない。

乗客同士のトラブルの種にもなりかねない。ビジネス客が多いのぞみ号ではややデメリットが多い。

なお、東北・北海道新幹線のはやぶさ号、秋田新幹線のこまち号、北陸新幹線のかがやき号は東海道新幹線ののぞみ号に比べるとビジネス客は多くはない。どちらかと言うと行楽客が多い印象だ。

<全車指定席導入列車との違い>

  • のぞみ=ひかり・こだまと同様にビジネス客が中心
  • はやぶさ・かがやき=行楽客が中心、ビジネス客は少ない

全車指定席を導入している列車とでは、客層の違いがあり、まとめるとこんな感じだ。

参照:新幹線の路線ごとの「全車指定席」を導入の有無! それらの背景も

座席指定には時間がかかる

新幹線や在来線特急の指定席の座席指定にはある程度時間がかかる。乗車駅と降車駅を選ぶだけではない。

希望の席を選ぶなどの選択肢もあるため、時間に余裕がない人には面倒な手間になる。そもそも、「いつ乗るかわからない」人にはかなりデメリットが大きい。

仕事で新幹線を利用するビジネス客は、仕事が終わる時間がわからないという人が少なくない。行きはまだしも、帰りは特に前もって列車に乗る時間を把握するのは難しい。

自由席が完全にゼロだった場合、のぞみ号に乗りたいビジネス客は駅に到着してから指定席特急券を購入するという形になる。

乗る直前に券売機やみどりの窓口に行く人が多いと、混雑が一部の時間帯に激化する原因となってしまう。

さらに、時間的に余裕がない人は券売機やみどりの窓口に並ぶ時間さえない。自由席なら来た列車に乗ることができ、切符も前持って購入しておくことができる。

座席指定には時間がかかるという特徴も、ビジネス客が多いのぞみ号で自由席が残っている理由の1つに当てはまるだろう。

本数が多い

本数が多いのぞみ

東海道新幹線の東京~新大阪は都心部の在来線並みに本数が多い。1日を通して乗客数が物凄い数にのぼるため、運行便数が線路容量いっぱいまで増やしている。

ここでも全車指定席にすると不都合がある。時間的に余裕がない人はまず、来た列車に乗るという方法がなくなる。座席指定に時間がかかるという欠点だけでなく、時間の活用そのものが非効率的になりかねない。

誤乗車も増える。誤って1本前の列車に乗ってしまうというケースが出てくる。自由席があれば、そのような乗客を誘導する座席があるが、全車指定席だと新たに料金が取られてしまう。

全車指定席を導入している新幹線では、本数は1時間に1本程度と少ない。最小で3分間隔で運転されているのぞみ号とはまったく違う。

本数が多いからこそ、のぞみ号にも自由席の設定がある理由なのは間違いないだろう。

2社の相互直通運転

東海道山陽新幹線の相互直通運転

のぞみ号は東京~博多間を運転する便だとJR東海とJR西日本の2社を通しで運転することとなる。東京~新大阪はJR東海、新大阪~博多はJR西日本が管轄する。

使用される車両もJR東海所属とJR西日本所属の2つがある。形式はいずれもN700系がメインだが、管理するのは別々である。

のぞみ号で仮に「全車指定席」にするのであれば、JR東海およびJR西日本の2社の同意は絶対に必要になる。

東北・北海道新幹線もJR東日本とJR北海道、北陸新幹線もJR東日本とJR西日本が相互直通運転を行う形になっているものの、いずれも開業当初から全車指定席を導入している。

さらに、どちらもJR東日本側が主体的な存在となっていることもあって、全車指定席を推進しているJR東日本の思惑が通せた部分も否定できない。

のぞみ号はJR東海・JR西日本どちらも一方的に影響力が大きいという構図ではないため、全車指定席を導入する方針を強引に通すのは無理がある。

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