日暮里舎人ライナーの経営状況は残念ながら赤字となっている。開業した2008年以来ずっと黒字化できた年が存在しないほど。
首都圏の中でも通勤ラッシュの時間帯の混雑が激しいレベルとしてちょっと有名だが、都営地下鉄・バスと比べると収益性が低く、利益がまったく出ていない。色々な問題の原因が潜在するのが日暮里舎人ライナーの特徴ともいえる。
なぜこのように日暮里舎人ライナーは赤字の状態が続いているのか。その理由についてみてみよう。
日暮里舎人ライナーが赤字の理由
主な原因 | 詳細 |
開業が新しい | 2008年に開業したため、借金返済が重くのしかかかる |
輸送密度が低い | 鉄道に比べて1度に輸送できる人員が少ない |
設備投資が大きい | 混雑緩和へ向けた新型車両の投入などにコスト |
日暮里舎人ライナーの経営状態が悪い主な理由は上の3つがまず挙げられる。都営地下鉄に比べて収益性が悪い要因がよくわかる。
開業したのが新しい
日暮里舎人ライナーが開業したのは2008年である。ここ最近の出来事であるため、十分な旅客収入が積み重なっていないのは否定できない。
日暮里舎人ライナーは新交通システムということで、全線に渡って高架上に軌道が建設されている。これを建設するためには膨大な費用がかかっているのは確か。
費用は借金することでまかなったが、それを返済するのは運賃収入である。その収入がまだ十分積み重なっていない。つまり債務の返済が終わっていない。
今の乗客の数で推移するとなると、開業から10~25年ほど経過しないと完全な黒字化は難しいだろう。
輸送密度が低い
日暮里舎人ライナーのような新交通システムは鉄道に比べると建設コストは確かに安く済む。鉄道のように複雑な信号システムや広い土地を必要とはしない。
住宅密集地であっても道路の上に軌道を通すなどして建設することができる。用地買収の必要性があまりないのがメリットといえる。
しかし、輸送密度は低い。1つの運転本数で輸送できる乗客数は鉄道の半分以下に留まる。
朝ラッシュのように限りなく増発したとしても、鉄道に比べると乗客の総数ははるかに低い。輸送効率が悪くなるのは否定できない。
参照:日暮里・舎人ライナーの混雑状況を時間帯・区間ごとに調査!
輸送密度が低ければ、運賃の収入も鉄道よりは下がる。通勤ラッシュでは大混雑になる日暮里舎人ライナーでも、借金の返済が楽になるほど多いわけでは決してない。
赤字の経営が続いてしまう理由の1つになっているのがわかる。
黒字化するのは2050年頃の見込み
- 黒字転換は早くて2050年頃
- 通勤ラッシュ対策の投資コストが影響
日暮里舎人ライナーの今の赤字の状態が解消されて黒字になるのは、2050年頃になると見込まれている。
これは今の乗客数が維持できた場合の予測である。もし今後足立区内で人口の減少や少子高齢化が加速すると、より黒字化は難しくなる。
通勤ラッシュの混雑緩和のための投資をこれからいくつか実施されると予想されるが、それらの投資に対する見合ったリターンが出るとは考えられない。
日中や休日ダイヤになる土日祝日の利用者数はそれほど多くなく、需要が低迷しているのは確か。
本来、需要が伸びれば運賃による収入が増えることで財政状況はよくなるはず。日暮里舎人ライナーは極端にその需要がラッシュ時に偏っているのが原因なのは間違いない。
しかも新交通システムという大量輸送にはまったく向いていない交通手段となっているのも、通勤ラッシュへの対策が難しい要因でもある。