日暮里舎人ライナーの延伸計画がある。具体的には、今の終点である見沼代親水公園駅から埼玉県川口市内へ延ばすという案である。
公共交通機関が手薄になっている地域でもあることから、地域住民が東京都心まで電車で行けるようにしたいという声があるのは確か。
しかし、これが実現される可能性はほぼゼロに等しい。永久的に今のように見沼代親水公園駅が終着駅であり続けることが予想される。
延伸できない理由
日暮里舎人ライナーで今抱えている問題は2つある。
- 経営状態が赤字、しかも黒字化の目途が立たない
- 通勤ラッシュの混雑率の高さ
経営状況が赤字
まず、日暮里舎人ライナーは経営状況が赤字となっている。新交通システムとして2008年に開業したものの、莫大な負債額を抱えていることから、経常利益がマイナスの状態が続いている。
新交通システムの軌道を建設するために生じた建設費だけではない。車両の更新費用なども多く発生している。
今のほとんど足立区内だけを走る路線で赤字ということは、延伸したところで黒字化する見込みはほとんどない。
建設費やランニングコストが現状にさらに追加される形となるため、ますます赤字の規模が大きくなるばかりだろう。
参照:日暮里舎人ライナーは赤字! なぜ黒字化が実現できないのか?
黒字化の見込みも薄い
しかも、この赤字の状態は今後も長く続くと予想されている。黒字化されるのは早くても2050年になるようだ。
この予測はあくまでも今の乗客数を保てた場合の話である。少子高齢化によって日暮里舎人ライナーの利用者数が減れば、ますます黒字化は無理になる。
今後乗客数が大幅に増えることは考えにくい。埼玉県内への延伸は白紙の状態といっても過言ではない。
通勤ラッシュの高い混雑率
通勤ラッシュ時の日暮里舎人ライナーは首都圏でもトップクラスの混雑率を誇る。国土交通省が毎年公表している各鉄道路線の混雑率の調査では190%弱の数値を記録している。
最混雑区間 | 数値 |
赤土小学校前→西日暮里 | 188%(2017年) |
<目安>ドア付近に立つと他の乗客と体が接するレベル |
これは、激しい混み具合になると有名な東急田園都市線を超す値である。東京メトロ東西線やJR中央総武線各駅停車に匹敵するレベルである。
もし仮に今よりもさらに北へ延伸させた場合、通勤ラッシュの時間帯ではさらに混雑がひどくなる。
日暮里駅に近い駅では満員で乗れない乗客も発生してくるだろう。積み残しが生じるリスクも大いに考えられるため、延伸計画はこの点でも難しいと判断できる。
参照:日暮里・舎人ライナーの混雑状況を時間帯・区間ごとに調査!
まとめ
日暮里舎人ライナーの延伸計画が実現される見込みは限りなくゼロ。
経営状況が赤字、通勤ラッシュの混雑のさらなる激化の2点がその原因。
埼玉県川口市内のエリアは引き続き公共交通機関はバスが主役であり続ける。