鉄道の電車の乗車定員は1両当たり130~160人ほどである。各車両や座席の種類によっても異なるが、これくらいが一般的である。
通勤型車両とも呼ばれるタイプで、座席数と吊革の数を合計した数値が「乗車定員」に該当する。
JR・私鉄の違いはほとんどない。あくまでも車両の規格ごとに違う。ロングシートと転換クロスシートでも多少の差がある。
鉄道車両の「定員」の定義
鉄道車両における「定員」の定義は全部で3種類ある。
これに関して、日本民営鉄道協会が具体的に解説している。
鉄道車両の定員には、座席数を算定した「座席定員」、通常の運行に支障のない定員数を示した「サービス定員」、さらに車両の構造または運転上、それ以上乗っては危険だという員数を示す「保安定員」があります。乗用車や航空機、船舶などは「保安定員」を定員としていますが、鉄道は「サービス定員」を定員としています。
引用:日本民営鉄道協会『定員』より
このうち、一般的に誰もが利用することが多い通勤電車の乗車定員は「サービス定員」に該当するもの。
座席数に加えて、電車の運転に支障がでない範囲で乗車できる立ち客の人数を合計した数値。
自動車のように乗車定員を示すものではない。
なお、ここでの「通常の運行に支障のない」というのは、全員が吊革または手すりにつかまれる範囲。
車内ではドア付近を含めてスマホの操作ができ、他の乗客と身体または手荷物が接することがないレベルのもの。
床面積で決定
通勤電車の乗車定員は座席数のほかに、車両の床面積で決まる。
立席(立っている人)の人数に関しては、1人当たりで0.14平方メートル使用するという前提で計算される。
これに加えて、座席数は乗車定員全体の3分の1以上は確保されていなければならないと鉄道車両の規格ルール「普通鉄道構造規則」で決められている。
車両の床面積によって決まるもので、普通鉄道構造規則では、座席については幅400mm以上、奥行き400mm以上、立ち席は1人当たりの占める広さが0.14平方mと定められています。また、座席定員は旅客定員(座席、立ち席定員の合計)の3分の1以上あることが必要です。
引用:日本民営鉄道協会『定員』より
日本民営鉄道協会でもこのように記載されている。
朝ラッシュの満員電車は定員オーバー
逆に言うと、朝ラッシュの首都圏の満員電車はどこも定員オーバーしていることになる。
実際に、満員電車の状態によって電車の運行にも支障が出ている。
ドアが閉まってもあまりにも混雑しているために、押し屋がいないと閉まらない状態は完全に支障ありと判断可能。
ロングシートの車両
車両 | 先頭車 | 中間車 |
---|---|---|
E233系 | 40(座席)+95(立) 合計135名 |
54(座席)+106(立) 合計160名 |
E231系 | 33(座席)+114(立) 合計147名 |
54(座席)+106(立) 合計160名 |
E721系 | 56(座席)+81(立) 合計137名 |
ー |
313系(静岡地区) | 48席(座席)+98(立) 合計146名 |
56(座席)+100(立) 合計156名 |
323系 | 35(座席)+105(立) 合計140名 |
49(座席)+104(立) 合計153名 |
321系 | 44(座席)+98(立) 合計142名 |
52(座席)+104(立) 合計156名 |
207系 | 50(座席)+100(立) 合計150名 |
58(座席)+105(立) 合計163名 |
ロングシートは首都圏のほとんどの路線と東海地区、関西地区の短距離路線で使用されている。
JR以外だと、大部分の私鉄と地下鉄で使われている。
「通勤電車」といえばまずはロングシートを連想する人もかなり多いはず。
立席の定員が多い
ロングシートとは、進行方向に対して横向きに座るタイプの座席。
通勤型電車では最も主流なパターンである。
座席が車両全体に占めるスペースの面積が小さくて済むのが特徴で、通勤ラッシュが非常に激しい首都圏ではどの路線でも主流である。
立ち席の乗客を多く載せられることから、乗車定員もやや多めである。
運転席がある先頭車で135~140名、中間車で150~160名前後が主流である。
ただし、JRの近郊型車両の場合だとトイレが設置されているため、トイレのある車両だとそのスペース分の乗車定員が少なくなる。
なお、1両の片側のドア数はあまり関係ない。「3ドア」と「4ドア」があるが、どちらもほとんど同じのため、乗車定員には影響しない。
ドア数はあくまでも乗り降りにかかる時間の違いしかない。
転換クロスシートの車両
車両 | 先頭車 | 中間車 |
---|---|---|
313系(名古屋地区) | 56席(座席)+90(立) 合計146名 |
56(座席)+100(立) 合計156名 |
223系(京阪神地区) | 48+補助16(座席)+70(立) 合計134名 |
56+補助16(座席)+73(立) 合計145名 |
223系(阪和線) | 44(座席)+88(立) 合計132名 |
52(座席)+91(立) 合計143名 |
225系(京阪神地区) | 44+補助16(座席)+73(立) 合計133名 |
56+補助16(座席)+72(立) 合計144名 |
225系(阪和線) | 34(座席)+100(立) 合計134名 |
46(座席)+99(立) 合計145名 |
227系(広島地区) | 44+補助16(座席)+73(立) 合計133名 |
56+補助16(座席)+72(立) 合計144名 |
転換クロスシートの代表的な車両といえば、JR東海の名古屋地区を走る313系、JR西日本の京阪神地区を走る223系や225系だろう。
JR西日本所属の車両には「補助席」も設置されている。
座席数はロングシートと大差ない。違うのは座っている人の快適性にある。
>>転換クロスシートのマナーとは!? 首都圏の人は知らない!
立席の定員が少なめ
転換クロスシートとは、進行方向に向いて座るタイプの座席である。新幹線や特急列車と同じタイプ。
終着駅では座席を進行方向に向けて転回する。折り返し運転の場合だと、乗客自身が行うことになる。
座席数そのものはロングシートの車両とほぼ同じだが、座席が車両全体に占めるスペースが大きいため立ち席の数が少ない。
運転席がある先頭車で130~140名、中間車で140~155名前後が主流である。
乗車定員ではそれほど大きな違いがないものの、超満員電車の場合に無理矢理乗客が乗り切れないというデメリットがある。
また、転換クロスシートは通路が狭いため、駅での乗り降りにも時間が長くなりやすい。
こうした背景から、乗客が多い首都圏ではマイナーとなっている。
まとめ
<通勤電車の乗車定員の目安>
ロングシート|先頭車=140名 中間車=160名
転換クロスシート|先頭車=135名 中間車=150名
通勤電車の乗車定員をまとめると、上記のようになる。
1つにまとめるのであれば、1両当たり140名前後と考えてよい。