中小私鉄の会社ごとの黒字/赤字の経営状況の一覧

中小私鉄の経営状況

中小私鉄に分類される鉄道事業者の経営状況に関して取り上げる。鉄道事業単体による黒字・赤字に関しては、営業係数を見ると一目でわかる。

会社全体が黒字経営を実現していても、列車の運行による収支では運賃による旅客収入よりも経費としてかかる支出の方が金額的に大きいところは結構多い。

特に中小私鉄となると、地方部に鉄道路線を持つ事業者を中心に赤字で不採算路線を抱えているところが目立つ。


中小私鉄の鉄道事業の営業係数と経営状況

鉄道会社 営業係数 鉄道事業の経営状況
弘南鉄道 101 ×
津軽鉄道 137 ×
福島交通 75
長野電鉄 97
上田電鉄 111 ×
アルピコ交通 87
黒部峡谷鉄道 108 ×
富山地方鉄道 111 ×
北陸鉄道 113 ×
新京成電鉄 90
関東鉄道 98
上信電鉄 108 ×
上毛電気鉄道 150 ×
秩父鉄道 103 ×
流鉄 120 ×
銚子電鉄 207 ×
小湊鉄道 98.9
江ノ島電鉄 91
箱根登山鉄道 102 ×
富士急行 88
伊豆箱根鉄道(大雄山線) 91
伊豆箱根鉄道(駿豆線) 96
伊豆急行 91
岳南鉄道 148 ×
静岡鉄道 114 ×
大井川鉄道 105 ×
遠州鉄道 91
豊橋鉄道 95
三岐鉄道 120 ×
福井鉄道 143 ×
東海交通事業 345 ×
養老鉄道 196 ×
北大阪急行電鉄 80
泉北高速鉄道 80
神戸電鉄 92
山陽電気鉄道 87
能勢電鉄 84
近江鉄道 123 ×
叡山電鉄 98
水間鉄道 94
紀州鉄道 341 ×
北神急行電鉄 86
嵯峨野観光鉄道 92
和歌山電鉄 134 ×
一畑電車 119 ×
広島電鉄 105 ×
水島臨海鉄道 103 ×
高松琴平電鉄 93
伊予鉄道 92
筑豊電鉄 108 ×
島原鉄道 115 ×
熊本電鉄 101 ×
※「〇」印は黒字、「×」印は赤字を示す。

営業係数とは、100円の利益を上げるのにかかる経費(支出)の金額を示した数値である。

100円未満であれば運賃による収入が経費でかかる支出を上回る「収入>支出」、つまり黒字であることを意味する。

100円を超える数値だと運賃による収入よりも経費として生じる支出の方が上回る「収入<支出」になる。つまり赤字を意味する。

今回のデータは東洋経済新報社が行った2013年のデータによるものである。

黒字の中小私鉄

鉄道事業が黒字の中小私鉄は以下である。

  • 福島交通
  • 長野電鉄
  • アルピコ交通
  • 新京成電鉄
  • 関東鉄道
  • 小湊鉄道
  • 江ノ島電鉄
  • 富士急行
  • 伊豆箱根鉄道
  • 伊豆急行
  • 遠州鉄道
  • 豊橋鉄道
  • 北大阪急行電鉄
  • 泉北高速鉄道
  • 神戸電鉄
  • 山陽電気鉄道
  • 能勢電鉄
  • 叡山電鉄
  • 水間鉄道
  • 北神急行電鉄
  • 嵯峨野観光鉄道
  • 高松琴平電鉄
  • 伊予鉄道

23社中11社は大都市圏の通勤路線という性質が大きい路線を持つ鉄道事業者である。

地方部でも鉄道事業が黒字の会社は県庁所在地クラスの都市圏だと黒字になっているところ結構ある。

赤字の中小私鉄

鉄道事業が赤字となっている中小私鉄は以下である。

  • 弘南鉄道
  • 津軽鉄道
  • 上田電鉄
  • 黒部峡谷鉄道
  • 富山地方鉄道
  • 北陸鉄道
  • 上信電鉄
  • 上毛電気鉄道
  • 秩父鉄道
  • 流鉄
  • 銚子電鉄
  • 箱根登山鉄道
  • 岳南鉄道
  • 静岡鉄道
  • 大井川鉄道
  • 三岐鉄道
  • 福井鉄道
  • 東海交通事業
  • 養老鉄道
  • 近江鉄道
  • 紀州鉄道
  • 和歌山電鉄
  • 一畑電車
  • 広島電鉄
  • 水島臨海鉄道
  • 筑豊電鉄
  • 島原鉄道
  • 熊本電鉄

いずれもほとんどは大都市部に鉄道路線を持たないところが厳しい状況に立たされている。

今回は登場していないが、国鉄の赤字路線がJR化の際に第三セクターとして経営分離された事例でもこれに該当するところが多い。

元々から民間企業として経営されてきた中小私鉄でも、地方圏を拠点にしていると、どうしても収入源となる電車通勤の乗客が少ないため、不採算路線を持つ結果となる。

なぜ赤字の私鉄でも倒産しない?

赤字でも倒産しない鉄道会社

ここで1つ疑問に思うことがある。

なぜ赤字の私鉄は倒産せずに存続できているのか?

このような問いである。

詳細な事情は各事業者によって異なるものの、基本的には以下の2つの背景が大きく関係している。

自治体からの補助金

まず、鉄道というのは公共交通機関。地域社会の足ともなっている。単に企業が利益を上げるためのビジネスではない。

このような公共物という性質から、経営が不安定な会社では地元の自治体から補助金が出ているケースが結構ある。

地方部の路線を抱え、営業係数が100超では特に補助金で成り立っているような鉄道事業者も目立つ。

国鉄が民営化されてJRグループになった際に、経営分離されて第三セクター化された不採算路線が今でも多くが存続できている理由もこれに該当する。

鉄道事業以外の分野に参入

さらに、鉄道事業以外の分野にも進出していることも理由の1つである。

鉄道会社とは言っても、ビジネスとして行っている事業は電車を走らせることだけではない。

同じ公共交通機関であるバス・タクシー、不動産業、宿泊業、飲食サービス業、小売業などを行っている会社がほとんど。

電車を走らせるだけの鉄道事業のみで利益を上げるを上げる鉄道事業者はまったくいない。

JRや大都市圏の大手私鉄、あるいは公営地下鉄でさえもこのような「副業」のような他産業に参入している。

いずれも鉄道事業だけでは収益に限界があり、会社として成長するためには他のビジネスに参入して売り上げを上げるしか方法がないためである。

赤字の鉄道事業者が倒産せずに何とかやっていけているのも理由はここにある。

~赤字の私鉄が倒産しない理由~

・自治体から補助金が出ている
・バス・タクシー事業、不動産業、宿泊業、飲食サービス業、小売業などの別の産業へ参入

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