東京メトロ銀座線の駅構内や電車の車内は狭い。すべて6両編成で運転されているが、首都圏では10両編成が主流となっていることを考えると、全体的に規格が小さくなっていることがわかる。
駅のホームは、6両編成分ピッチリしか用意されていない。ちょっとでも停止位置がずれた場合、一部は即トンネルの中に入ってしまう。電車のブレーキ操作には誤差があってはいけないほど狭い。
近年は、駅ホームから線路に転落するのを防ぐ目的でホームドアの設置が進んでいるが、銀座線のホームを見るとそれを整備できる余裕があまりないように感じる。
現在はその銀座線でもホームドアをすべての駅に付けることが計画されていて、工事が順次行われている。しかし、ホームの広さが狭いことには変わりなく、他の路線と比べるとどうしても窮屈な感じがするのは事実。
昔は十分だったから
地下鉄銀座線が開業したのは、上野~浅草間は戦前の1927年のことである。当時は、日本で初めて出来た地下鉄道であり、アジアでも初の出来事だった。広告の宣伝でも「東洋唯一の地下鉄道」というフレーズが使われていた。
1939年には渋谷~浅草間で全線開業した。しかし、輸送力は当時はそれほど多くはなく、車両も1両編成で運転されていたほどだった。
その後、太平洋戦争が始まった1941年には2両または3両で運転されるようになった。戦後は、1955年に4両編成以上、1960年には朝ラッシュの時間帯に限って6両編成での運転が始まった。
この時代も、狭い駅と車内空間でも輸送力には大きな問題はなかった。現在のような10両編成で走らせるほど莫大な需要はなかった。
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今のような全列車6両編成で運転されるようになったのは1966年のことである。これ以降は、大幅な輸送力の強化が行われることはなく、銀座線の混雑緩和には新線の建設と信号システムの改良でまかなってきた。
ホームドアも必要になった今
現在、銀座線は日中でも3分間隔で電車が走っている。他の路線では5分間隔となっているため、高頻度で走っていることがわかる。
駅構内および電車の中が狭いことから、ちょっとでも運転間隔が広がると乗客で溢れてしまうためだ。
しかし、それでも現代では広さが十分だとは言えない。輸送力の増加だけが課題ではないためだ。ホームドアの設置のような安全対策も必要な時代となっている。
私鉄との相互直通運転がなかった銀座線でホームドアがこれまで進んでこなかったのは、狭い環境が理由といってよいだろう。
一方、6両編成ではホームの有効長と電車の長さがギリギリとなっている状況の中、停車位置の正確さが求められているということで、銀座線では定位置停止装置(TASC)という自動ブレーキが使われるようになった。
TASCは01系が完全に普及した1993年から使われている。地下鉄でも他の路線ではまだ運転士による手動ブレーキが主流だった時代から、銀座線では使われている。
狭いという特徴がある銀座線は、他の地下鉄とは違った進化をしてきたといえる。