工学部出身者の平均年収は495万円という調査結果が出ている。理学部と並んで「理工系」として医学部・歯学部・薬学部に次いで高い数値。
この金額は30歳の時点での学部学科ごとの年収を示したものであるが、他の学部と比較すると工学部は「高い」に分類。
あらゆる学部の中でも平均的な収入が高い背景は明確に存在。
理学部出身者の30歳時点の平均年収
順位 | 学部 | 平均年収(30歳時点) |
---|---|---|
1位 | 医学部、歯学部、薬学部 | 506万円 |
2位 | 理学部、工学部 | 495万円 |
3位 | 経済学部、経営学部、商学部 | 480万円 |
4位 | 法学部、政治学部 | 476万円 |
5位 | 情報学部 | 471万円 |
6位 | 農学部、獣医学部、畜産学部 | 423万円 |
7位 | 教育学部 | 416万円 |
8位 | スポーツ学部、健康科学部 | 407万円 |
9位 | 国際学部 | 402万円 |
10位 | 社会学部 | 394万円 |
11位 | 文学部、人文学部 | 389万円 |
12位 | 芸術学部 | 383万円 |
13位 | 環境学部 | 382万円 |
14位 | 外国語学部 | 376万円 |
15位 | 看護学部、保健学部、福祉学部 | 353万円 |
16位 | 観光学部 | 340万円 |
17位 | 家政学部、生活科学部 | 322万円 |
18位 | 心理学部 | 290万円 |
参考資料:まいにちDODA『あなたの出身学部は何位? 学部別の平均年収ランキング』より
上記の表は出身学部別の30歳時点での平均年収を表した表。学科の違いは考慮していない。
こちらは上記の表を基に作成した出身学部別の平均年収を示したグラフ。
全部で18系統ある中で、工学部と理学部はともに2位にランク。国内の様々な学部の中でも上位勢にランクインするのがわかる。
経済学部や法学部などの文系よりも高い金額を出している。
全体で第2位…医・歯・薬の次
工学部は総合大学であればメジャーな学部の1つとして存在。特に国立大学では、文系専門の大学以外では必ずと言っていいほど設置されている。
残念ながら、国家資格取得に直結する医学部・歯学部・薬学部と比較すると平均年収は下がる。
医療系は卒業後の職業がほぼ確定している。工学部はあくまでも自由に選択する分野のため、個人差が大きくなる。この点から平均年収もやや下がる。
一方、それら以外の理系および文系の学部学科よりは高い。同じ理系の情報学部や農学部、畜産学部より高い。経済学部や法学部のように比較的富裕層に出身者が多い学部にも勝る。
工学部の年収が高い理由
工学部において年収が高い理由として、考えられる主な内容は以下の通り。
主な理由 | 詳細な内容 |
---|---|
専門分野が明確に存在 | 民間企業・官公庁の技術職・研究職では理工系の学部学科を卒業していることが募集の条件だったりする。 |
就職・転職市場に有利 | 工業国の日本では理工系出身者の人材を多く必要とする。供給に対して募集が多い。 |
製造業が多い | 日本は工業国。製造業が主要な産業ということもあって、工学系の大学出身者を必要とする企業が多い。 |
いずれも工学部と重複する内容だが、他学部に比べて収入面で恵まれている事情は明確に存在。
仕事で活かせる専門性を学ぶという性質もあるが、日本の産業構造にもカギが隠されている。
専門分野が明確に存在
工学部は民間企業や官公庁の業務内容に直結する分野を学ぶところが少なくない。
同じ工学部とはいえ、実際には機械・航空宇宙・電気電子・建築・生物・化学等に分かれるものの、いずれも仕事で活かせる専門的な分野に該当。
言い方を変えれば「卒業後も役に立つ」分野の学問である。大学で学んだ勉強を活かせるのが理工系の特徴。
就職の際にも、技術職を中心に工学部に在籍する学生を募集対象とする事例がかなり多い。
例えば、とある企業A社の新卒採用では以下のように記載されている。
技術系総合職の応募資格
化学系、高分子系、化学工学系、薬学系、生物系、材料系、物理系、機械系、電気・電子系、情報系の学部学科に所属する学生に限る。
製造業の場合、採用人数が事務系よりも技術系の方が圧倒的に多い場合がほとんど。
加えて、募集対象の理工系に在籍する学生数は日本中全体で見ると少ない。大半が文系が占める社会的背景があるが、工学部出身者によってはその分採用の際に優遇されやすい。
そんなメリットもあって、他の学部と比較してより良好な条件が整った就職先へ入れる。ここでの良好な条件には年収の良さも該当。
各学科によって需給状況はやや異なるものの、少なくとも文系学部と比べたら遥かに学生側が有利な「売り手市場」である。
就職・転職市場に有利
工学部出身者の主な職業である研究・開発・設計などの技術系の職種の募集はどんな時期であっても存在する。
世間全体が不景気になって景気減速した場合でも、企業では製品の開発や生産のために理系人材を必要とする。
すなわち、新卒採用でも中途採用でも理学部出身者にとっては有利な環境に置かれる。モノづくりが日本から消滅しない限り、工学部出身者の需要は消えない。
一方、特に文系学部出身者では経済状況によっては苦境に立たされることがある。事務系職種は元々供給過多の状態にある。
そんな中で、社会全体が不況になると求人数はさらに減少。事務系は高倍率になって、仕事がない状態の人が発生するリスクが上昇する。
対照的に理工系ではこのような影響を比較的受けにくい。新卒採用でも「就職氷河期」と言われる状況下でも、工学部をはじめとする理系人材は需要が尽きない。
製造業が多い
日本の主要産業はモノづくりを担う製造業。
近年ではサービス業が台頭しているとされているが、まだまだ製造業が主要な産業であり続けている。
製造業の国内総生産に占める割合は、18.7%(2014年度)あり、サービス業に次ぐ日本経済を支える大きな産業となっています。
製造業の歴史は米国・欧州、次いで日本が長く、その間さまざまな課題に直面し乗り越えてきました。日本が戦後70年の間に解決してきた環境問題やエネルギー問題のノウハウは、新興国にない大きな優位性と言われています。Canon「日本のものづくりの力」
最近は中国、東南アジア、インドなどの低コストで製品を生産可能な新興国が台頭しているのは確か。
中でも、大量生産型でライフサイクルが早い家電など安価な消費者製品は日本国内での生産が減少し、新興国での生産が基本になりつつある。
機械的な構造を持った製品(事務機械、自動車、工作機械など)こそ、システムや機械構造が複雑なこともあって日本での生産が維持されているものの、いずれは衰退するとの見方もある。
それでも、製造業が大幅に衰退して工学系の人材を必要としない日が来るとは考えにくい。
工学関連の人材が元々少ない環境下では、年収が高い仕事を見つけやすい。その分、平均年収も他学部より上がりやすい事情が出来上がっている。
それでも年収が低い人とは、こんな方々!
一方で、理学部出身者だからといって100%全員が年収が平均以上というわけでない。
中には大卒どころか高卒の人達よりも低賃金で働いている人もいて、正規雇用ではなく非正規雇用で労働する事例もある。
《高学歴なのに就職できない人の特徴! 致命的な理由はこの4つ》
よくあつパターンが次の内容。
- 人と話すのが苦手
- マナーを守れていない
- 表情が暗い
- 協調性がない
いわゆる「社会不適合者」のように、社会で仕事をしていく能力に乏しい場合だと、たとえ理学部出身者であったとしても年収が高い職業には就き難くなってしまう。
年収が高い就職先とは、大手企業がどうしても中心になる。
規模が大きくて世間一般で広く知られている会社となれば、最低限度の人間性が求められる。上記の4つに欠けるとなれば、専門的な知識を持っていても採用されにくくなる。
ただし、他の学部と比較して大手企業への入りやすさの点では理学部出身者には大きなアドバンテージがある。
特定の人達にしか開かれていない職所の採用が豊富のため、少なくとも文系学部に比べたら遥かに就職しやすい。