JR南武線では日中の時間帯に限って「快速」が運転されている。一方、朝と夕方以降はまったく走っていない。各駅停車だけとなり、通過駅のある優等列車はまったくゼロとなっている。
昼間の快速は、川崎駅~立川駅の全線に渡って通過駅の設定がある。停車駅は、乗降人数が多い主要な駅にだけ停車する。
東京メガループを構成する路線ということで、東京都心へは直結していないものの、速達運転の需要はあるようだ。平日は毎時2本、土日祝日は毎時3本の本数で快速が運転されている。
なぜ、南武線の快速は朝のラッシュの時間帯と夕方から夜にかけては運転されないのか。速達性の需要はないのか、それとも何か別の理由があるのか。
ダイヤが過密、余裕がまったくない
南武線の朝ラッシュの混雑は首都圏の中でもトップクラスに入る。東京都心部へ直結していないにも関わらず、電車の混み具合は超満員と化している。
川崎市内の工業地帯があることで、工場へ通勤する人たちが多く利用することや、他路線との接続駅が多いことが、乗客が多い理由となっている。
混雑のため、南武線を運行するJR東日本では、電車の本数を可能な限り多くしている。朝に限れば、特に登戸~川崎間においては、7時台後半から8時台にかけては2~3分間隔で走っている。
複々線区間はどこにもないため、ダイヤはもはや過密状態となっている。各駅停車だけで線路容量が限界に達しているところに、さらに快速を投入するのは不可能だろう。
快速を走らせるほどダイヤに余裕はまったくない。しかも、各駅停車を追い抜かせる待避線のある駅も少ない。
夕方についても同じことがいえる。帰宅ラッシュとなると、再び混雑が激化する。それに合わせて、電車も3~5分間隔で走っている。
短い間隔で走っている各駅停車で限界状態に達しているのが南武線ならではの特徴である。だからこそ、乗客が多くなる朝と夕方は快速を運転できない状態にあるのだ。
仮に走ってもノロノロ運転に
もし、無理矢理快速を走らせた場合、南武線の利用環境はどうなるだろうか。通過駅の設定があれば、その分所要時間が短くなると感じるだろう。
しかし、ダイヤが過密状態ということで、すぐに前をか知る各停に追いついてしまうだろう。次の待避駅までは追い抜けない。結局はノロノロ運転となり、所要時間はほぼ同じとなる。
さらに、快速が止まらない駅を乗り降りする人は皆各駅停車に殺到するため、乗車率にも大きな違いができることが予想される。快速にも、ある程度長い距離を乗る人が殺到する。
各駅停車と快速で、それぞれの利用者層が狙って乗ろうとするようになる。これによって、停車駅での乗り降りにかかる時間も長くなるだろう。そうなると、南武線全体の所要時間が長くなってしまう。
朝と夕方に快速を運転するメリットがまったくないのが、JR南武線の事情ではないか。