ゆりかもめの運賃は鉄道と比べると高い。なぜ料金は割高に設定されているのか、値下げできない理由も考察してみた。
初乗り運賃こそは2kmまでの区間ならICカード料金が165円の日暮里舎人ライナーの方が安いものの、都営地下鉄は初乗り運賃が適用されるのが4kmまでと長い。
その後は距離が長くなるにつれて日暮里舎人ライナーの運賃が割高になる。
ゆりかもめの運賃
距離(キロ) | ゆりかもめ | 都営地下鉄 | 東京モノレール |
2km | 185円 | 174円 | 195円 |
5km | 247円 | 174円 | 267円 |
8km | 319円 | 216円 | 340円 |
15km | 381円 | 267円 | 483円 |
初乗り運賃で比べると、ゆりかもめは2km以内の区間であればICカード利用時の料金は185円になる。
黒字経営では割高
これは、都営地下鉄より10円近く高い一方で東京モノレールよりは安い。
東京モノレールの場合、195円の区間は1.5~4.5kmまでで適用される。ゆりかもめと比べると全体的にやや割高感がある。相対的にゆりかもめは割安かのように見える。
しかし、それでも鉄道各線と比べると料金が高いことは確か。東京都心周辺では割高といわれる都営地下鉄よりも高めである。
新交通システムとしては数少ない黒字経営になっている。1日当たりの利用者数が10万人を超えていて、収益性が高い路線でもある。
朝夕の通勤ラッシュのみならず、土日祝でもお台場や東京ビッグサイトへのアクセス手段として多数の乗客が利用する。ゆりかもめの経営が安定している点に疑いの余地はない。
このような背景を考慮すると運賃が高いという事実は否定できない。値下げを求める人の意見も無視はできない。
新交通システムだから高いのか?
ゆりかもめは一般的な鉄道とは違って輸送効率が悪い「新交通システム」だから運賃が割高になっているという見方も大きい。
実際にところ、利用者数が多くても同じ輸送人員を確保するためにかかるランニングコストは鉄道よりも新交通システムやモノレールの方が圧倒的に割高になる。
ただし、ゆりかもめは他の新交通システムよりも安い料金に設定されているかというと、そうではない。
距離(キロ) | ゆりかもめ | 日暮里舎人ライナー |
2km | 185円 | 165円 |
4km | 247円 | 226円 |
6km | 319円 | 278円 |
10km | 381円 | 329円 |
日暮里舎人ライナーと比べても距離に対する料金は割高になっていることがわかる。
初乗り運賃の時点で、ゆりかもめは日暮里舎人ライナーよりも+10円高い金額になっている。10kmの区間でもゆりかもめの方が+50円ほど高い。
ここで注目したいところがもう1つある。ゆりかもめは黒字なのに対して、日暮里舎人ライナーは赤字経営である点だ。
後者は東京都交通局が運営するため都営地下鉄と同じ感じにはなるが、それでも単体で見ればゆりかもめよりも財政状況は悪い。
新交通システムだから割高になっていると全面的に認めるのは難しい。
>>日暮里舎人ライナーは赤字! なぜ黒字化が実現できないのか?
黒字でも高いもう1つの背景
ゆりかもめの運賃は高い背景はただ輸送効率の悪さだけではない。競合路線の有無、路線の性質そのものにも要因が隠されている。
新交通システムでは同じ仲間である日暮里舎人ライナーの場合、路線は完全に「通勤路線」に該当する。沿線の住民のための交通手段という性質が強い。
ゆりかもめは臨海部と都心のアクセス手段である。沿線の住民の足というよりも、都心部から臨海部へ用事がある人向けの交通手段となっている。
利用者全体に占める定期券利用者の割合でも、日暮里舎人ライナーは大きい一方でゆりかもめは小さい。一時利用者が大きな割合を占める。
さらに、臨海部へのアクセス鉄道として競合する関係である東京臨海高速鉄道りんかい線を見ても同じように運賃が高い。
競合する鉄道が存在していても価格競争が起こりにくい構図が成立している。
日暮里舎人ライナーは東武スカイツリーラインや地下鉄千代田線、つくばエクスプレスが付近を走っている。
ちょっとでも駅から離れている人だとより安い鉄道路線を使ってしまうため、高い運賃を強要するのが難しいという背景もある。
>>【りんかい線】運賃がかなり高いのはなぜ? JRで迂回した方が安い!
他の運賃が高い鉄道会社および路線の事情
地域 | 鉄道事業者 |
東京都内 | 東京モノレール、東京臨海高速鉄道、都営地下鉄、東京メトロ(初乗り) |
その他首都圏 | 北総鉄道、東葉高速鉄道、つくばエクスプレス、埼玉高速鉄道、京成、東武、横浜市営地下鉄、京急 |