新幹線の電気代はいくらになるのか。消費電力から割り出してみた。膨大なエネルギーを使用するのはイメージがつくが、実際の相場の目安を出してみた。
東海道新幹線の東京~新大阪で16両編成の列車だと、電気代は片道当たり27万円ほどの金額になる。1km当たりに換算すると270円ほど、つまり概算で約300円になる。
在来線よりもスピードを出すため消費電力も多くなるが、それでも1人当たりの費用となればかなり少ない。環境にやさしいエコな乗り物になる。
電気代の計算式
新幹線の代表格ともいえる東海道新幹線の場合だと、電気代の計算式は以下のようになる。
東京~新大阪の消費電力=約1万kW
JR東海の電気料金の単価=1kW当たり約15円
列車1本当たりの電気代=10,000kW×15円=15万円
鉄道事業者は電力に関しては大口契約を行っている。家庭用電気と比べると単価が割安な料金に設定されている。
東京~新大阪間の距離は552.6kmである。したがって、1km当たりに換算すると271.2円という答えが出る。
実際には列車の走行だけでなく信号設備や駅設備にも電力が消費される。とはいえ、それでも300円程度が目安になる。
在来線の通勤型の電車の場合だと、1km当たりの走行の際の電気代は100円前後になるため、新幹線はその2~3倍ものコストがかかる。
それでも1人当たりの消費電力および電気代を考えると、他の交通機関でこれほど効率的なものはない。
新幹線をはじめとする鉄道の最大の特徴はこのように1人当たりの消費エネルギーの少なさではないか。
航空機をはじめ、バスや乗用車と比べても消費エネルギーとコストはかなり少ない。
1人当たりの電気代
新幹線の1人当たりの電気代は次のようになる。
15万円÷1,300=115.38円
16両編成の列車に1,300人の乗客が乗っていると仮定。
乗客1人当たりの東京~新大阪の電気代は115円程度になる。500km超の距離の移動でこれほど少ない金額になる乗り物はない。
ジュース1本分の値段にとどまる。消費電力が少ないことはもちろんのこと、経済的にもやさしい。
他の路線についても、新幹線の1列車当たりの消費電力や電気代はほとんど変わらない。
ただ、乗車率は東海道新幹線よりは低い。東北新幹線や山陽新幹線のように最高速度も300km/hクラスになると消費電力も上がる。これによって乗客1人当たりの電気代はやや上がる。
日本国内の新幹線全体を視野に入れた場合、1人当たりの電気代は200~250円程度が1つの目安になるだろう。
参照:新幹線の最高速度を地図化! 路線と区間ごとにすると!?
省エネ化が進んでいる
ところで、新幹線が開業した1964年以降は新しい車両の登場とともに徐々に消費電力が少なくなっている。
0系のころは最高速度が200km/hでの運転だったものの、消費電力は285km/hを行う今のN700系の方が約3割ほど少ない。
エネルギー効率の向上、回生ブレーキの搭載などによって新幹線も在来線の通勤電車とともに省エネ化が進んでいる。
それに伴って、1人当たりの電気代も下がっている。最近では電力供給の問題が表面化しているものの、それでもエコな乗り物である点は揺るぎないものだろう。
リニア新幹線の電気代と比較
現行の鉄道の新幹線とリニア新幹線を比較した場合の電気代では、後者が前者の約3~5倍ほどになるといわれている。
路線 | 消費電力(東京~大阪) | 電気代 |
東海道新幹線 | 約1万kW | 約15万円 |
リニア中央新幹線 | 約3.5万kW | 約45万円 |
※東海道新幹線はN700系で運転と試算 |
最高速度285km/hの東海道新幹線の東京~新大阪の消費電力は約1万kWであるのに対して、リニア中央新幹線の品川~新大阪は約3.5万kWになると推定される。
ただし、リニアモーターカーの場合は初期加速で膨大な電力を消費する。磁力で浮上するまでには数十万kWも使うという見方が大きい。
しかも乗車定員も現行の新幹線よりも少ないため、1人当たりの電気代に換算すると最低でも10倍以上にはなると考えられる。