JR北海道は完全な赤字経営となっている。黒字化は厳しくて永久に不可能とも言われている。その理由はたった1つしかない。
北海道という地域が広大かつ鉄道網が需要を遥かに下回っているからである。土地が広くて線路の営業距離があまりにも長いことが影響している。
札幌都市圏だけを見ればJR北海道の在来線は黒字経営となっている。田舎の地域の路線網が足を引っ張る形なのが予想できる。
利用者数がいない不採算路線が多すぎる
札幌都市圏の人口規模が小さいわりに、利用者数が極めて少ない不採算路線が多すぎる。
これがJR北海道が赤字に陥っている最大の理由だろう。
JR北海道はそもそも大都市圏が少ない割には利用者はほとんどいない地方部の区間がかなり多い。
基本的には、同じように国鉄が民営化されて登場したJRグループで赤字のJR四国と事情が似ている。
参照:JR四国はなぜ赤字!? 黒字化は永久に無理なたった1つの理由
営業キロ数だけは長い
JR会社 | 営業キロ数 | 経営状況 |
JR東日本 | 7,449km | 優 |
JR西日本 | 4,869km | 良 |
JR北海道 | 2,552km | 不可 |
JR九州 | 2,273km | 可 |
JR東海 | 1,982km | 優 |
JR四国 | 855km | 不可 |
営業キロ数で見ても、JRグループではJR東日本、西日本に次いで長い。
JR東日本もJR西日本もそれぞれ首都圏・仙台都市圏、近畿圏・広島都市圏以外のほとんどは路線単体では赤字になっている。
しかし、それを帳消しにするほど大都市圏での輸送人員が多いため、全体ではプラス収支を実現している。
一方のJR北海道では札幌都市圏の鉄道利用者数が限られてしまう。本州JR3社と比べると厳しい条件なのがわかる。
本州は土地に制約があって人口密度が高いこともあり、鉄道による人員の輸送が向いていることも否定できない。同じ地方の田舎でも、まだ輸送密度は大きい。
北海道内は特に人口密度が小さい地域でもあるため、鉄道が浸透していないエリアでは余計に乗客の数が減る。
輸送密度がさらに低くなり、より赤字を出しやすい条件ができてしまっている。
大都市圏があっても赤字
JR会社 | 大都市圏 | 都市圏人口 | 経営状態 |
JR北海道 | 札幌 | 260万人 | 赤字 |
JR東日本 | 東京 | 3,700万人 | 黒字 |
JR東海 | 名古屋 | 940万人 | 黒字 |
JR西日本 | 大阪 | 1,900万人 | 黒字 |
JR九州 | 福岡 | 550万人 | 黒字 |
JR四国 | ー | ー | 赤字 |
※都市圏が少なく、輸送密度の小さい郊外エリアが広大だと赤字 |
JRグループで赤字経営に陥っているのはJR北海道とJR四国の2社である。それ以外は黒字となっている。
JR北海道も札幌都市圏をカバーしている。しかし、全国のほかの大都市圏と比べると人口規模は少ない。
JR東日本の首都圏は3,700万人、JR西日本の関西圏は1,900万人の人口がある。私鉄各社もあるため、鉄道のすべてをJRの領域になるわけでないものの、市場としてみればかなり魅力的なのは確か。
札幌都市圏はたったの260万人
一方の札幌都市圏はたったの260万人にとどまる。辛うじて黒字のJR九州の福岡・北九州都市圏の550万人の半分程度しかない。
鉄道で多額の利益を上げていくには環境が十分に整っているとは言い難い。人口密度が低いうえに広大な土地をカバーするJR北海道に赤字から脱却できる余地がないのがわかる。
さらに、札幌市内はJR線のほかに地下鉄の路線網もある。鉄道すべて=JR北海道ではない。
営業キロ数が長いにも関わらず、ドル箱ともいえる大都市圏の人口規模が少ないのは大きなネックなのは否定できない。
>>【北海道新幹線】やはり赤字だった!? 採算が取れない理由とは?
黒字化するためには
JR北海道が赤字経営から脱却して黒字化を何とか実現するための方法はもう決まっている。
- 不採算路線を廃止
- 札幌都市圏の運行本数の充実化
地方部の採算が取れない赤字路線を廃線にして、利益が出やすい札幌都市圏の各路線の利便性を高めることがその方法になる。
都市部にだけ集中投資すれば、赤字の要素が消え去って黒字の部分だけが残る。
ただ、実際にはこれを行うのはかなり困難になる。鉄道という公共性のあるインフラである以上、採算が取れないからといって廃止するのは社会的に認められない。
地元の自治体はまず反対するだろう。しかもJR北海道の運営主体が国である以上、より公共性を重視せざるを得ない。民営化が完全に行われたJR本州3社やJR九州とは違う。
>>JR北海道が倒産する可能性のレベルを分析! 国有化の計画も