リニア中央新幹線はなぜ東京駅に乗り入れができないのか。品川駅始発で妥協された理由について考察する。
1964年に開業した東海道新幹線は東京駅発着となっている。首都圏の鉄道の玄関口という性質が大きく、利便性は非常に良い。
一方のリニア中央新幹線は品川駅発着にとどまる。利便性が良いとは言えない。背景には、東海道新幹線と同じく東京駅発着にできない事情がある。
東京駅乗り入れ不可の理由
主な原因 | 詳細の内容 |
地下空間に余裕がない | リニア中央新幹線の線路、駅ホームを新規で建設できるスペースがない |
東京駅の管理がJR東日本 | JR東海ではなく、リニアに消極的だったJR東日本が東京駅を管理している |
東北方面との接続需要の少なさ | 東北・上越・北陸新幹線と接続できるが、そもそも乗り換え需要が少ない |
リニア中央新幹線が東京駅には乗り入れずに品川駅発着とした理由は、上の3つが有力である。
東京駅は地上の空間はもちろんのこと、地下空間にもスペースに余裕がない。駅自体もJR東日本の所有物であるため、土地所有の交渉が必要になる。
そして、接続する東北・上越・北陸新幹線があるとはいえ、首都圏から東海、関西方面へ向かう人のほとんどは東京をはじめとする首都圏の人達がほとんどという現状がある。
こうした背景があるため、リニア中央新幹線が品川駅発着で落ち着いた理由と考えられる。
地下空間に余裕がない
東京駅の地下はすでに開発済みとなっている。東海道新幹線の地下でも山手線の地下でも空間に余裕がない。
品川駅は地下鉄の乗り入れがなく、JR在来線の各線もホームが地上にあるため、地下空間には余裕がある。それとは対照的に東京駅は地下にも鉄道が走っている。
京葉線や総武快速線、横須賀線、さらには地下鉄各線の線路が存在するため、リニア新幹線のホームを新たに建設できるスペースがない。
地下40m以上の大深度ならまだ用地に余裕があるものの、地上から遠く離れていると、ホームと地上を行き来するのがかなり面倒になる。
しかも建設費も莫大なコストになる。利便性や経済性を考えると東京駅の大深度にホームを建設してまでリニア中央新幹線を延伸させるメリットが薄い。
東京駅はJR東日本の領土
リニア中央新幹線の所有者はJR東海である。東海道新幹線と同じく名古屋に本社がある東海旅客鉄道株式会社がオーナー。
東京駅はJR東日本の所有物になる。東海道新幹線のホームがある一部の区域だけがJR東海所有になっているものの、それ以外の場所はすべてJR東日本の所有物である。
リニア中央新幹線を建設するとなると。どうしてもJR東海が単独で建設できる話ではない。少なからずJR東海管理区域からはみ出してしまう。
丸の内側は完全にJR東日本の管理区域であるのはもちろんのこと、八重洲口も建物から出た外側はJR東日本の管理区域になる。
大深度に駅ホームを建設したとしても、改札口やエスカレーター、階段などの設備も建設する必要がある以上、JR東日本の了承が絶対に必要。
以前からJR東日本はリニア中央新幹線には消極的な姿勢を見せていたこともあって、東京駅にリニア中央新幹線が乗り入れるのが簡単にはいかない事情がある。
東北・上越・北陸新幹線との乗り換え需要が少ない
東京駅への乗り入れが実現すれば、東北・上越・北陸新幹線との接続ができる。これによって北関東方面、東北地方との行き来が便利になるのは確か。
しかし、今の東海道新幹線でも東海・関西方面と行き来する人のほとんどは首都圏発着である。東北・上越・北陸新幹線と乗り継ぐ人は割合的には少ない。
リニア中央新幹線でも同じような関係になると予想される。
<東京駅乗降者の状況>
- 東海道方面は首都圏が出発地または目的地
- 東北・上越・北陸方面も首都圏が出発地または目的地
- 乗継客は少数派
したがって、多額の費用を投資してまで東北・上越・北陸新幹線の各線と接続して利便性を向上されるほどのものではないというのが実態のようだ。
一方、品川駅は単独では需要はそれほど大きくはないものの、渋谷・新宿方面との行き来がしやすいというメリットがある。山手線の南側の玄関口のような性質もあるため、在来線との乗り換え需要は大きい。
上野東京ラインが開業したこともあって、北関東方面との行き来も便利になった。そんな意味では、品川駅の利便性は一定は確保されていると判断できる。