北陸新幹線の区間/列車ごとの最高速度を調査

北陸新幹線

北陸新幹線の区間および列車ごとの最高速度を調査。最高速度は260km/hだが、実際にはこれよりも部分がある。全線で飛ばせるわけではない。

遅いと感じたこともある人はいるだろうが、その理由はここにある。かがやき、はくたか、あさま、つるぎのいずれも共通。

減速をせざるを得ない場所は、高崎駅付近の分岐点、軽井沢駅付近、碓氷峠トンネル内、飯山トンネル内である。さらに、東北新幹線と共用区間である東京~大宮も遅い部分である。


北陸新幹線の区間・列車ごとの最高速度

区間 かがやき はくたか あさま つるぎ
東京~大宮 110km/h 110km/h 110km/h
大宮~高崎 240km/h 240km/h 240km/h
高崎~金沢 260km/h 260km/h 260km/h 260km/h
※主な減速箇所
・高崎駅の分岐点:160km/h
・碓氷峠トンネル内の下り坂:210km/h
・軽井沢駅付近:110km/h
・飯山トンネル内の下り坂:210km/h

北陸新幹線の列車であるかがやき号、はくたか号、あさま号、つるぎ号のいずれも最高速度は260km/hである。

東北新幹線のように列車種別で異なるわけではない。使用されている車両もE7系・W7系に統一されていることもあり、差異はまったくない。

ただし、全区間で260km/hが物理的に出せるわけではない。

東京~大宮

東京~大宮の新幹線

東北・上越・北陸新幹線の東京~大宮間の最高速度は110km/hに規制されている。

2020年からは130km/hに引き上げられるものの、それでも新幹線としてはかなり遅い。在来線特急と同じレベルの速度にとどまる。

該当する区間はJR埼京線と並行して走るところ。新幹線と埼京線の電車が並走して走るシーンを見かけるが、これは新幹線が遅いことによるもの。

沿線からの騒音問題があったこと、都市部に建設したことによる用地取得の面から規格外カーブが多数存在することが主な要因。

東北・上越・北陸新幹線の全列車この区間の最高速度は同じ。種別による違いもまったくない。

参照:東北新幹線の東京~大宮間はどうして遅い!? 最高速度は110km/h!

大宮~高崎

大宮~高崎の上越新幹線区間

大宮~高崎間の区間は上越新幹線との共用区間。最高速度は240km/hに設定されている。

参照:上越新幹線の区間/列車ごとの最高速度を調査! なぜ遅い?

こちらは2022年頃をめどに最高速度が275km/hに引き上げられる予定だが、2019年10月の台風19号による水没と廃車により、北陸新幹線のE7系・W7系が不足。

上越新幹線でのE4系の置き換え時期が未定になったことで、上越新幹線内の最高速度は当面240km/hに収まる。

このため、北陸新幹線全体ではスピードアップが実現できていないポイントとなっている。

高崎~金沢

北陸新幹線単独区間

高崎~金沢間は北陸新幹線単独の区間であり、最高速度は建設限界が低く抑えられているところ以外では260km/hとなっている。

長野駅付近や富山駅付近には規格外のカーブがあるものの、これらの駅は主要駅のため全列車停車する。したがって、減速を余儀なくされるほどの大きな問題はない。

高崎以西は旧長野新幹線時代も260km/hだった。

一方で、この区間は「整備新幹線」の部分でもあり、線路設備を保有しているのはJR東日本・JR西日本ではない。鉄道運輸機構の所有物で、JRが列車を運行するという方式である。

このため、法律に基づいて最高速度が260km/hにとどまっている。東北新幹線や東海道新幹線、山陽新幹線のように思ったほど速達化ができていない。

主な減速箇所

北陸新幹線では減速余儀なくされる部分が結構存在する。

減速箇所 制限速度 理由
高崎駅の分岐点 160km/h 上越新幹線との分岐点(ポイント)の性能上、160km/hでの通過が限界。
碓氷峠トンネル内の下り坂 210km/h 勾配が30パーミールの急勾配のため、下りではブレーキの性能上210km/h以下で走行。
軽井沢駅付近のカーブ 110km/h 半径600mの規格外の急カーブが存在。通過列車も大幅に減速。工期短縮のため新幹線規格を維持できず。
飯山トンネル内の下り坂 210km/h 勾配が30パーミールの急勾配のため、下りではブレーキの性能上210km/h以下で走行。

高崎駅付近の分岐点

高崎駅は北陸新幹線と上越新幹線の分岐点である。

北陸新幹線が後から建設されたこともあって、上越新幹線側が本線、北陸新幹線が副本線となっている。

ポイントがかなり高性能なものであるが、それでも通過速度は160km/hが限界。

このため、高崎駅には停車しないかがやき号でも160km/hまで減速して通過する。

碓氷峠・飯山トンネル内の下り坂

碓氷峠トンネル内と飯山トンネル内は新幹線としては急勾配になっている。

30パーミールの勾配があることで、下り坂を走行する列車は抑速ブレーキを使用しながら運転するが、このブレーキの性能が長時間かけ続けられる安全上の限界が210km/h。

これに伴い、E7系・W7系すべてにて210km/hで走らざるを得ない。

なお、上り坂の最高速度は260km/h。あくまでも制限速度がかかるのはこれら2つのトンネル内の下り坂のみ。

軽井沢駅付近の急カーブ

軽井沢駅付近には新幹線規格であるはずの半径4,000mを大幅に下回る規格外のカーブが存在する。

ここは半径600m。制限速度は全列車110km/hにまで下がる。

軽井沢駅を通過するかがやき号も一旦110km/hまで減速する。

この部分にてこれほどの急カーブになった理由は工期短縮を優先させた長野新幹線時代にある。

長野新幹線は1998年の長野冬季オリンピックに間に合わせることが優先された。

軽井沢駅辺りは用地買収や線路設計に支障が出ていたこともあり、やむを得ず急カーブして駅と線路を建設した。

そんな背景から、北陸新幹線の高速運転の支障になっている。

北陸新幹線が遅い理由

遅い北陸新幹線

開業したのが2015年にも関わらず、東海道山陽新幹線や東北新幹線よりもスピードが遅い。

50年以上前に開業した東海道新幹線では最高速度が285km/hになっている。山陽新幹線、東北新幹線(盛岡以南)については、それぞれ300km/h、320km/hになっている。

北陸新幹線は、九州新幹線や北海道新幹線、東北新幹線の盛岡以北と同じ速度に設定されている。車両についても、使用されているE7系・W7系は設計速度が275km/hとなっている。

どうして、北陸新幹線では260km/hまでしか出せないのか。また、スピードアップされる予定はないのか。

整備新幹線だから

北陸新幹線は、「整備新幹線」として建設された路線である。全国新幹線鉄道整備法という法律に基づいて、政府が1973年に整備計画を出した路線の1つに北陸新幹線が入っている。

整備新幹線では、すべて設計速度が最高速度260km/hに定められている。これは、建設コストと速達性の必要性から考えられたとされているが、従来の新幹線よりもややきつい作りになっている。

直線が長い区間でも、騒音対策については260km/hでの走行時を想定しているため、それよりも高速運転のことは考慮されていない。

線路を所有しているのは鉄道建設・運輸施設整備支援機構という独立行政法人であり、JRはあくまでも列車を運行しているだけに過ぎない。そのため、JRが独断で速達化を計画したり、設備の工事に踏み切ることはできない。

鉄道事業者や乗客が「北陸新幹線をもっと速くしてほしい」と言っても、それを実現できにくいのが、今の北陸新幹線をはじめとする整備新幹線の実情なのだ。

使用されている車両もまた、260km/hでの運転を前提に作られている。E7系・W7系はいずれも飛ばしても275km/hまでしか対応していない。

大宮~高崎間は240km/hもネック

北陸新幹線でも、260km/hを出せるのは高崎駅以西の単独区間である。大宮~高崎間は上越新幹線の線路を走るが、この区間は最高速度が240km/hになっている。

上越新幹線のの場合、大宮~新潟間ではずべての列車で240km/hまでと設定されている。これには、北陸新幹線の列車も適応される。線路や信号設備が240km/hを最高速度として設けられているためだ。

東北新幹線

さらに、東京~大宮間の東北新幹線と線路を共有する区間に至っては、最高速度が110km/hに抑えられている。在来線とほとんど変わらないスピードである。並行して走るJR埼京線と並んで走る光景もよく見られるほどだ。

この区間は、きついカーブが多い。さらに、建設の際に騒音がひどくなるということで反対運動が盛んだった背景があることもあり、遅い速度になっている。新幹線としてはかなり遅いのは言うまでもない。

全体的に遅い北陸新幹線だが、整備新幹線で定められている基準にも満たない区間が多いのが特徴といえる。

他の新幹線の最高速度の事情

路線名 速度 種別ごとの補足
東海道新幹線 285km/h のぞみひかりこだま
みずほ、さくら、つばめ
山陽新幹線 300km/h
九州新幹線 260km/h
北海道新幹線 260km/h はやぶさ
やまびこなすの
東北新幹線 275-320km/h
秋田新幹線 130km/h
山形新幹線 130km/h
上越新幹線 240km/h
北陸新幹線 260km/h

参照:新幹線の最高速度を地図化! 路線と区間ごとにすると!?

他の新幹線の区間と列車ごとの最高速度の事情について解説。


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