鉄道の駅員の平均年収は約450万円前後と推定。
仕事内容が同じでも、全国の各鉄道事業者によって給料水準が大きく違いがあるため、かなりバラツキがあるのは実情。
首都圏のような大都市部かつ大手の鉄道会社であれば年収は600万円前後が平均値になる一方、地方部の第三セクターや中小私鉄では300万円台と低くなる。
事業者別の推定年収
JR各社 | 推定年収 |
---|---|
JR本州3社、大手私鉄 | 350~900万円 |
JR・大手私鉄の子会社委託 | 250~600万円 |
中小私鉄 | 250~800万円 |
公営地下鉄 | 350~800万円 |
第三セクター | 200~700万円 |
鉄道事業者の中でも、駅員は「運輸系」という分類に該当。他にも運転士・車掌がこれに入るが、年収は駅員の方が低い傾向。
厚生労働省の平成26年度賃金構造基本統計調査によれば、従業員数1000人以上の企業における年収は電車運転士681万円、旅客掛(駅員など)526万円となっており、確かに電車運転士のほうが給与は高い。ただ、従業員数10~99人の企業における年収を見ると、電車運転士347万円、旅客掛337万円となっており、電車運転士の優位性は失われる。
引用:東洋経済「鉄道事業を営む203社「平均年収」ランキング」
入社直後の新入社員も、文系出身者は駅係員としてスタートすることが多く、年収の平均が低い要因の1つともなっている。
ただし、勤務先の鉄道事業者の収益の良し悪しで給料は大きく異なり、大都市部では高い反面、地方部では低い傾向。
JRグループでも、本州3社は平均年収が400~900万円またはそれ以上になるが、島部(九州・四国・北海道)では350~600万円前後と推定。
地方部ではこのように低い水準に落ちる。
JR本州3社、大手私鉄
該当する鉄道事業者
大手私鉄(首都圏):京浜急行電鉄、東急電鉄、相模鉄道、小田急電鉄、京王電鉄、西武鉄道、東武鉄道、京成電鉄
大手私鉄(関西):阪急電鉄、阪神電気鉄道、京阪電気鉄道、近畿日本鉄道(近鉄)、南海電鉄
上場しているJR・私鉄では有価証券報告書にて平均年収を公表している。これをもとに年収の目安を算出。
範囲は350~900万円が目安。前述のように駅員は若手社員が多いこともあって、有価証券報告書に記載の金額よりは低くめ。
その一方で、助役以上の役職者では600万円以上の水準になり、駅長クラスでは1,000万円超になる。
一方、特に大手私鉄では自社の収益力によって年収水準が違ってくる。
首都圏をはじめ、収益力が高い会社であれば年収は500~600万円程度が相場だが、関西私鉄の一部と名鉄・西鉄では400~500万円前後が相場と下がると推定。
基本給は低いとの声が各社で聞かれ、深夜手当などの特別手当で辛うじてある程度の給料が維持されている。
JR・大手私鉄の子会社委託
JR・大手私鉄の駅であっても駅務業務を子会社へ委託している事業者では年収水準は下がる。
250~600万円が範囲になる。
駅務は特別な資格を必要とはしないため、正社員ではなく、契約社員やアルバイト、パートなどの非正規雇用も多い。
これらは給料水準が下がり、250~450万円程度と低くなりやすい。
正社員であっても親会社で直接雇用されている駅員と比べると、年収は2~3割ほど下がる感覚。
中小私鉄
該当する鉄道事業者
新京成電鉄、首都圏新都市鉄道(つくばエクスプレス)、北総鉄道、東葉高速鉄道、東京臨海高速鉄道、埼玉高速鉄道、関東鉄道、上信電鉄、上毛電鉄、埼玉新都市交通、東京モノレール、江ノ島電鉄、箱根登山鉄道
伊豆箱根鉄道、静岡鉄道、名古屋臨海高速鉄道、福井鉄道、えちぜん鉄道、富山地方鉄道、富山ライトレール
北大阪急行電鉄、山陽電鉄、泉北高速鉄道、近江鉄道、能勢電鉄、和歌山電鉄、水間鉄道、北神急行電鉄、神戸電鉄、広島電鉄
非上場企業が多い中小私鉄。これらの事業者の駅員も勤務先によって大きく異なる。
収益力がある会社は大手私鉄並みかそれ以上の水準に達するが、苦しい立ち位置にあるところでは相当低い。
例えば、北大阪急行電鉄は中小私鉄でも収益性が高いため、平均年収は600万円以上に達すると推定。。
一方で、和歌山電鉄の平均年収は284万円、えちぜん鉄道は301万円、福井鉄道は315万円、上信電鉄は319万円と少ない。いずれも収益性は悪く、駅員の平均年収もこれよりさらに低い金額になるだろう。
乗務員は全体よりは平均年収がやや上位になるものの、これらの収益性が低い中小私鉄では大手私鉄に比べると劣る。
範囲も250~800万円とバラツキが大きい。
公営地下鉄
該当する鉄道事業者
札幌市交通局、仙台市交通局、東京都交通局、横浜市交通局、名古屋市交通局、京都市交通局、神戸市交通局、福岡市交通局
公営地下鉄は政令指定都市の「〇〇交通局」として運営されている公企業。
基本的には政令指定都市役所の職員と同じ水準の給料。
乗務員手当がある運転士・車掌でも年収は一般行政職とあまり差がない。
年収は400~900万円が範囲で、鉄道事業者としては高い方に分類される。
第三セクター鉄道
公企業と民間企業の中間的な存在なのが第三セクター鉄道会社。
中小私鉄と給料水準はやや似ているが、経営状況が赤字のところがほとんど。これにより、年収も低いところが目立つ。
範囲も300~600万円にとどまる。一般的な民間企業と比べても低い水準。
ただし、収益力がある会社こそは中小私鉄の上位勢並みの水準に達する。
事例としては、愛知環状鉄道、IRいしかわ鉄道などの一部に限られる。
駅員は運転士・車掌よりも給料が低い事情
駅係員の給料水準は電車の運転士・車掌と比べると高い。その理由は以下の2点。
- 年齢層が若手:入社間もない社員の最初の配属先のため
- 非正規雇用多数:契約社員、パート、アルバイトでの雇用が多め
- 委託業務多数:子会社への委託なら、給料も子会社独自の金額になるため
もっとも、航空会社のパイロットのような大幅な手当はなく、一般的な企業との金額の違いはそれほどないのも確か。
推定根拠は社員の年齢
電車の運転士・車掌は20代後半から30代いっぱいが主流層。
対して、駅員は管理職以外の正社員では20代いっぱいが主流層。
前述のように鉄道事業者への入社直後の配属先が駅ということで、年収も初任給に準ずる金額。
新入社員が多ければ、その分全体の平均年収も落ちる。
その一方で、運転士や車掌でも最低3年ほどは経過した人に割り当てられるところが目立つ。
運転士はさらに車掌を一定年数経験してからなれる立ち位置。若くても20代後半からになる。
こうした点から、鉄道事業者中でも同じ運輸系の職種でも駅員の年収は低い。
参考:乗務員手当
JR・大手私鉄では運転士と車掌には「乗務手当」がある場合がほとんど。
対象は乗務員ということで、駅員にはない制度。
列車に乗っている時間に比例して特別手当が支給される。この制度も高い平均年収を支えている。
乗務員手当
乗務員手当は乗務時間と距離に応じて別途支給される給与
計算式:乗務員手当総額=1か月あたりの乗務時間・距離 × 時間・距離単価
乗務とは、運転士であれば実際に列車を運転している時間、車掌であれば列車に乗っている時間で、1分単位で計算される。
乗務員は一度出勤すると乗務を何度も繰り返す(一日の乗務をまとめたものを「行路」という)ので、それが全て乗務時間・距離として加算される。
引用:鉄道会社からの脱出「鉄道会社の給料 -実はおいしいのは運転士?」
つまり、列車に乗務している時間の長さが長いほど手当が支給される。
これは基本給とはまた別にカウントされる。
駅員にはこのような乗務員手当がないため、その分年収の面では劣っている。
ただし、残業代に当たる「時間外手当」、深夜勤務で支給される「深夜手当」は駅員も対象になる。