東武東上線では2015年から鉄道信号システムをATCに切り替えている。それまでは信号灯を使ったATSを使用していたが、遂に廃止となって使われなくなった。現在は池袋~小川町間の全区間で変更が完了しているため、すべての列車が車内信号となっている。
ATSはJRなどの鉄道会社で多く使われているが、近年は特に私鉄を中心にATCへ切り替える事業者が増えている。
どうして、東武東上線でもATC化する必要があったのか。背景にあった理由について詳しく見ていこう。
そもそもATCのメリットとは?

ATCは車内信号の形式をとり、曲線通過時やポイント通過時に制限速度が連続的に列車にしっかりとかかるような仕組みになっている。
従来の信号システムでは、その直前で速度照査する程度であり、照査点を通り過ぎればたとえ制限速度のあるカーブを通過中であっても上限を超えてスピードが出せる状態であった。
例えば、制限速度が70km/hのカーブを通る場合、ATSならその手前にある速度照査で70km/h以下になっていれば、そこを通り過ぎた時点で80km/hでも90km/hでも出せるようになる。ATCの場合はカーブが終わって制限速度解除の地点を通り過ぎるまでは70km/hを超えないようになっている。
運転士の操作次第では安全性に問題が出る可能性があるのは確かである。そこで、ATCにすることにより運転士のミスで速度超過するということがなくなる。
また、ATCにすることにより先行する列車との間隔に応じてブレーキを制御できるようになる。前を走る電車に後続の電車が接近すれば自動的にブレーキがかかる仕組みになっている。
東上線は高密度なダイヤなため!

ATCが最も力を発揮するのはダイヤが過密している路線である。従来のATSよりも列車の運転間隔を狭めることができる。そのため、運行本数が多い高密度運転が実施されている東武東上線にはふさわしい存在というわけである。
東上線の場合は、都心と郊外を結ぶ鉄道路線である一方、ほぼ全線に渡って複線となっていて、複々線化があまり進んでいない。
和光市~志木が複々線になっているとはいえ、距離がかなり短い。複線の区間において高密度なダイヤになっているのは間違いない。
さらに、東武東上線はかなり踏切が多い路線でもある。ATC化したわけであるが、東武東上線のものが「T-DATC」と呼ばれる独自のタイプであるが、これは踏切の作動システムにも関係している。
ATC化したことにより、踏切の遮断時間が短縮されたのも特徴的な事実だ。より列車の速度に合わせて踏切の作動時間を調節できるようになったため、線路周辺の人の移動の円滑化にもメリットがあるのが、東上線のT-DATCといえる。
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