JR学研都市線(片町線)で遅延が多い原因について調査。他の線区の影響・営業キロ数の長さが主な原因に挙げられる。
平日5日間での平均遅延日数は3~4日。総延長の営業キロ数は44.8kmと決して長い距離ではないものの、その割にはダイヤの乱れが多い。
JR西日本の近畿地方の路線の中でも比較的運転見合わせのような完全に電車がストップしてしまう頻度が高い。
<最新の遅延情報に関してはJR西日本公式ホームページにて。>
目次
学研都市線の遅延の主な理由
遅延の原因 | 頻度 | 詳細な内容 |
---|---|---|
他線区の影響 | ★★★★★ | JR東西線、宝塚線、神戸線との直通運転 |
単線区間の存在 | ★★★★★ | 松井山手~木津間が単線 |
踏切関連 | ★★★★ | 踏切での人身事故、緊急停止と安全確認等 |
学研都市線の京橋~木津間で遅延や運転見合わせの原因となるのは、上の3つが当てはまる。
学研都市線という路線そのものにダイヤが乱れやすい理由が存在する上、他の路線に起因する問題も結構見られる。
まずは直通運転。他の線区でのトラブルが遅延の理由になりやすい。
JR東西線経由でJR宝塚線(福知山線)の篠山口駅まで乗り入れる。
さらに、単線区間の存在もネック。1本の線路を上下線の電車が行き来するため、上り・下りのどちらか一方でも遅れると、反対側の電車にもその影響が波及。遅延が連鎖反応しやすい原因なのは確か
そして踏切の存在。学研都市線は高架上の区間がやや少なく、途中でいくつもの踏切が存在。人身事故、線路内立ち入りや直前横断による緊急停止と安全確認によるものが目立つ。
これら以外にも急病人救護、駅構内の非常ボタンの作動、車両故障・設備故障などもあり得る。
気になるのは「他線区の影響」と「単線区間の存在」で、この2点の重要度が大きい。
他線区の影響と総走行距離の長さ
学研都市線に該当する区間は木津~京橋間だが、この区間だけを走る電車はない。京橋駅から西側へも電車は行き来する。
JR東西線、JR宝塚線(福知山線)、JR神戸線と直通運転を実施。
遅延が起きたとしても、その原因が生じた発生地点がJR宝塚線区間の部分であるとは限らない。
◎JR学研都市線を走る各列車の主要運転区間と距離
宝塚線(福知山線)|篠山口~木津:115.7km、宝塚~木津:75.1km
神戸線|西明石~木津:105.5km
走行距離も伸びる。学研都市線単体では総延長が50km未満だが、直通先と合算すれば100km超にもなる。
直通運転(JR東西線・宝塚線・神戸線)
学研都市線の列車の直通先
- 京橋~尼崎:JR東西線
- 尼崎~西明石:JR神戸線(東海道・山陽本線)
- 尼崎~篠山口:JR宝塚線(福知山線)
学研都市線とは言っても、京橋駅を境にして別の路線・線区と直通運転を実施している。
首都圏で主流な「相互直通運転」とシステム的には同じ。
一方で快速・区間快速を中心に京橋駅よりJR東西線に乗り入れ、その先の尼崎駅より宝塚線または神戸線へ乗り入れる電車がある。
宝塚線は宝塚・新三田・篠山口のいずれかまで乗り入れる。神戸線は須磨・西明石のいずれかまで乗り入れる。
このため、それらの路線にて遅延が発生すれば学研都市線区間を走る電車も同時に遅れが生じる。
例えば、JR宝塚線内にて人身事故が発生して運転見合わせになると、学研都市線内でも電車がやって来ないことになる。
最終的には運転再開までは、直接的な問題がない学研都市線・JR東西線内にて尼崎駅や京橋駅等で折り返し運転という代替手段が取られることがよくあるが、そんな時でも無影響にはならない。
直通先のいずれの路線も営業キロ数が長い上、全体を通して複雑な運転系統のため、ダイヤが非常に不安定な傾向。
JR神戸線に起因する遅延
◎JR京都線・神戸線に起因する遅延
- 混雑
- 路線距離
JR神戸線での遅延の原因は激しい混雑と路線距離の長さがあげられる。京都線(大阪~京都)を加えるとさらに対象区間が広範囲になる。
学研都市線・JR東西線直通列車では基本的に西明石駅までが乗り入れ区間だが、京都方面の電車も同一の線路を走行することで、間接的に遅れの影響を受ける場合がある。
京阪神間を結ぶ主要路線ということで、途中駅の数そのものが多いことで、乗降時間の延長などもその分起きやすい。
路線距離も各駅停車でさえ100km超になるため、途中で遅れの原因となるトラブルに見舞われるリスクも高め。
宝塚線(福知山線)に起因する遅延
◎宝塚線に起因する遅延
- 路線距離の長さ
- 特急列車の遅れ
JR宝塚線での遅延の原因は路線距離。
福知山線全体では尼崎~福知山間の総延長が106.5km。100km超の長距離路線なのがわかる。
普通列車や快速こそは大阪~篠山口間でも66.1kmにとどまるものの、特急列車はそうではない。
特急こうのとり号は城崎温泉駅までの200km近く走るが、途中で普通・快速電車がこれの通過待ちをおこなう。
特急列車は遅れる頻度こそは1週間に1,2回程度だが、それの待避をおこなう電車も遅れる
もちろん、丹波路快速をはじめ篠山口駅まで走る場合でも距離は短いわけではなく、遅延が起きにくい構造とはかけ離れている。
単線区間
単線区間が存在する点も遅れが拡大する原因。
複線区間であれば、2、3分程度の遅れが出てもそれ以上何かの問題がない限りは拡大することがない。
一方の単線となると、駅間の線路は上下線のどちらかの列車しか同時には走れない。
学研都市線では、木津方面へ向かう電車が列車交換(すれ違い)を行う駅への到着が遅れると、反対方向の京橋方面へ向かう電車も発車できずに遅れる。
片方が5分遅れると、もう片方も5分は遅れる。
学研都市線では松井山手~木津間の17.0kmが単線ということで、上記以外で遅延が起こりやすい構造となっている。
踏切は定時運行の敵
学研都市線は高架区間が非常に少ない。ほとんどの区間は地上を走っている。そのため、一般道路と踏切で交差する部分が多い。踏切が多ければ、その分線路内に人が立ち入るケースも多くなる。
実際、線路内に人が立ち入ったために電車がストップして遅延が発生するということも頻繁に起こる。踏切内での人身事故も多く発生する。
特に東大阪、大東、四條畷市内には多くの踏切が設置されている。この区間で何らかのトラブルが良く発生する場所となっている。
まとめ
京橋から木津までの44.8kmを走り、大都市大阪の近郊路線という性質を持つ学研都市線。沿線はベットタウンとなっていて、大阪市中心部への通勤路線としての役割を果たしている。
電車が遅れる原因は以下3つが挙げられる。
- 直通先の問題
- 単線区間がある
- 踏切関連の人身事故、安全確認
特に単線区間の存在は主要路線ではレア事象。
直通先が多い
学研都市線を走る電車はただ京橋~木津の区間を走るだけではない。JR東西線に入って北新地・尼崎を経由して宝塚線まで直通運転する列車が多い。また、おおさか東線からの電車も学研都市線内に乗り入れている。
首都圏では相互直通運転がほとんどの路線で行われているが、関西では珍しい。1つの列車は同一路線内しか走らないパターンが多い。学研都市線は関東型の運行体系になっているといえるだろう。
仮に学研都市線内ではなんのトラブルが起きなかったとしても、直通先のおおさか東線やJR東西線、宝塚線内で何らかの異常が起きると無関係であると思われる学研都市線にも悪影響が及んでしまう。
直通先で列車に遅延が発生すれば、それに伴って学研都市線の電車も遅れてしまうというわけだ。
単線(未複線)
学研都市線の場合、他の近郊路線とは違って一部単線になっている。単線とは、線路が1本しかない状態のことであり、上下線のどちらか一方向にしか一度に走らせることができない。
上下線のどちらかに遅れが発生すると、その反対の方向へ向かっている電車もその列車が待避線に入るまでは待っていなければならない。そのため、同時に遅れが生じてしまうのだ。
複線であれば、上り線を走る列車が遅れたとしても、下り線には直接影響が及ばないため定時運行ができる。上下線の両方が止まってしまうような大きな問題が起きない限りは一部列車の遅延の影響は限定的となる。
学研都市線は松井山手駅以東は終点の木津駅まで単線区間になっている。これもまた、電車が毎日のように遅延が生じる理由となっているのは間違いない。
その他、各路線の遅延事情について
鉄道事業者 | 路線名 |
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JR西日本 | JR神戸線、JR京都線、JR阪和線、JR東西線、JR琵琶湖線、JR嵯峨野線、JR湖西線、JR大阪環状線、JR学研都市線、JR宝塚線、JR大和路線、JR奈良線、JRおおさか東線 |
大阪メトロ | 御堂筋線、谷町線、堺筋線、中央線、長堀鶴見緑地線、四ツ橋線、千日前線、今里筋線 |
阪急電鉄 | 阪急京都線、阪急神戸線、阪急宝塚線 |
阪神電気鉄道 | 阪神本線 |
京阪電気鉄道 | 京阪本線 |
近畿日本鉄道 | 近鉄奈良線、近鉄京都線、近鉄大阪線、近鉄南大阪線、近鉄名古屋線 |
南海電気鉄道 | 南海高野線、南海本線 |