宇都宮線で遅延が多い原因を調査！ 主要な理由は4つ

JR宇都宮線（東京～黒磯）にて遅延が毎日のように頻繫に発生している原因について調査。

相互直通運転による他の線区の影響・営業キロ数の長さ・人身事故・安全確認の実施などの存在が主な原因に挙げられる。

首都圏の中で遅延が発生する頻度はトップクラス。ほぼ毎日電車がストップしたり遅れたりする。朝から夜まで時刻表通りに列車が走ることはもはやレア事象。

平常運行が維持されている時がほとんどなく、何からの形で電車のダイヤが乱れている。

＜最新の遅延情報（JR東日本公式ホームページ）＞

宇都宮線の遅延の主な理由

参照：鉄道の遅延の原因とは!? よくある事例の一覧

宇都宮線の東京～宇都宮間で遅延や運転見合わせの原因となる点として、上記4つが当てはまる。

宇都宮線という愛称が付く東北本線そのものにダイヤが乱れやすい理由が存在することはもちろん、それ以外にも他の路線に起因する問題も結構多い。

高架区間・地下区間がほとんどなくて地上の平面を走るため、踏切の数が多く、これに関連する人身事故も結構な頻度で発生。

特に絶対に無視できないのが、「営業キロ数の長さ」と「他線区の影響」である。これら2点の重要度が大きい。

参考：【ランク別】首都圏の遅延が多い／少ない鉄道路線を一覧化

宇都宮線と関連のある路線については上記で解説。

他線区の影響

かつては上野始発だったJR宇都宮線であるが、現在は上野東京ラインの開通によって東京駅まで乗り入れる。

さらには東海道線にも直通し、電車1本で最長で静岡県の沼津駅まで行ける。

乗客の一部にとっては電車1本で埼玉方面と神奈川方面とを行き来できるようになった反面、不利益を感じる重大な欠点が遅延の多さ。

宇都宮線を含む上野東京ライン、あるいは湘南新宿ラインの遅延率は首都圏の鉄道路線の中でも特に多く、定時運行が困難な環境を作り出している。

相互直通運転（上野東京ライン・湘南新宿ライン）

宇都宮線とは言っても、ほとんどの列車は上野～黒磯以外の区間や路線と相互直通運転を実施している。

「上野東京ライン」「湘南新宿ライン」という直通サービス名で列車が運転されている。

上野東京ラインだと、東京駅から神奈川県側にて東海道線へ乗り入れている。

湘南新宿ラインだと、大宮駅から東北貨物線を通して池袋駅・新宿駅・渋谷駅などを経由して横須賀線へ乗り入れている。線路は埼京線ともシェアする。

宇都宮線の同一列車がそのまま他の路線と行き来しているため、それらの路線にて遅延が発生すれば宇都宮線の電車も同時に遅れる。

例えば、東海道線内にて人身事故が発生して運転見合わせになると、宇都宮線の電車も一時的にストップする。

最終的には運転再開までは、東京駅を境に直通運転の中止と折り返し運転という代替手段が取られる。とはいえ、それでも無影響にはならず、最低でも5～10分は遅れる場合がほとんど。

関連路線の影響（高崎線・埼京線）

宇都宮線単独の列車が直接乗り入れるわけではないものの、運転系統が何かしら関連する路線が上記。

一部列車は「湘南新宿ライン」として新宿駅を経由するが、これらの区間はまた別の路線と同一線路を共有したり、第三の路線と相互直通運転を実施している。

湘南新宿ラインが走る池袋～大崎間は埼京線の線路。ここで埼京線のダイヤの乱れの影響をまず受ける。

大崎～武蔵小杉間は埼京線と相鉄本線を乗り入れる相鉄・JR直通線も走る。

宇都宮線の湘南新宿ラインは横須賀線へと入るわけだが、同じところに相鉄線と関係する電車も走っている。つまり、相鉄本線などの影響も受ける。

さらに、埼京線は東京臨海高速鉄道りんかい線と相互直通運転を実施しているため、ここの影響も若干は湘南新宿ラインへ波及。

これにより、宇都宮線とは直接的に関係ない路線の遅延が原因で宇都宮線そのものの遅れとつながる構図が出来上がっている。

人身事故・安全確認

宇都宮線は特に人身事故が発生することが多い。

一度事故が発生すると、最低3、4時間は列車の運転が再開できない。大規模な運転見合わせにも発展する。

発生する箇所としては踏切内と駅構内の2パターンがほとんどだが、特に気になるのが前者。

踏切での人身事故

踏切は人身事故が起きる場所の典型的な原因である、クルマなどの一般交通と電車が衝突する可能性も高い。

踏切での事故は電車が100％止まってしまう要因なのは確か。復旧には時間を要するため、大幅にダイヤが乱れるよくある理由。

宇都宮線は大宮以北で特に地上平面交差が数多く存在。連続立体交差事業もほとんど進められていないため、道路とは踏切で交差する地点が膨大の数にのぼる。

踏切の数が多ければそれだけ事故が起こるリスクが上がり、実際にも踏切内での人身事故による運転見合わせは他の路線よりも明らかに頻発。

毎日のように遅延が発生している現状の一因と判断できる。

安全確認の実施

踏切に関連することは人身事故だけではない。列車通過直前の立ち入り、障害物の検知といった問題も発生する。

このような出来事が生じると、電車と人や車が衝突・接触しなくても一旦電車が止まって安全確認を行うことになる。

異常がないことの確認作業には最低5分はかかる。

長い時間にわたって続く遅れではないものの、遅延としてカウントされる基準の5分を超える。

また、駅構内の列車緊急停止ボタン（非常ボタン）の作動に関してもよくある事例。

高崎線との重複区間である大宮以南だと高崎線の電車を対象に非常ボタンが作動すると、後続の宇都宮線がつっかえてしまって遅れへとつながる。

営業キロ数が100km超

他の路線の影響が大きく関係している宇都宮線だが、距離自体の長さもまた気になるポイント。

運転系統としての終点は宇都宮駅の場合がほとんどということで、東京～宇都宮間に絞ってもその営業キロ数は109.7km。首都圏でも有数の長距離路線。

路線距離が長い分、途中で何かのトラブルが発生する確率が高い。

前述の踏切事故をはじめ、架線支障、ポイント動作不良、信号トラブルなどの設備の故障が短い路線よりはリスクが高い。

1編成当たりの列車の走行距離も長いため、車両故障のリスクもまた高まる。

実際のところ、宇都宮線内での要因によって他線区へ遅延の悪い効果が波及することもかなり多い。

なお、宇都宮～黒磯間は運転系統が分離されているため、実質的な営業キロ数は53.8kmと短く、宇都宮駅以南よりは遅延の頻度は少ない。

＞＞普通列車（各停）の最長距離ランキング！ キロ数ごとに一覧化

一方、上野東京ライン（宇都宮線＋東海道線）の宇都宮～沼津の区間の営業キロ数は235.7km。超長距離路線とみなせるレベルで、途中で電車が遅れる確率は上がるのはもはや避けられない。

実際にこのような点が宇都宮線のダイヤの不安定さをさらに押し上げている。

それほど影響はしていない要因

遅延の原因として認識されやすい内容として上記の内容もある。

人身事故や信号・車両トラブル、あるいは悪天候が直接的な理由で電車がよく遅れる。時刻表通りに走っているという前提で駅に行くと、電車が大幅に遅れていたという経験をあなたもするかもしれない。

しかし、いずれも宇都宮線が他よりも遅延が起こりやすい大きな理由というほどのものではないのも否定できない。

慢性的な混雑

朝夕の通勤ラッシュによる混雑も遅れの原因として見られることがあるが、宇都宮線の場合はこれには該当しにくい。

混雑が原因での遅延の詳細

• 宇都宮線：土呂→大宮の混雑率およそ150％
• 首都圏では緩やかな数値

宇都宮線の朝ラッシュの混雑は首都圏では下位。

参考：JR宇都宮線の混雑状況を時間帯・区間ごとに調査！

混雑が激化すると、停車駅での乗降時間が長くなって遅れの理由になる事例もゼロではないが、他と比べるとこうなる事例は少ない。

混雑が原因で宇都宮線の電車が遅れやすいとは判断できない。

設備故障

車両故障、ポイント動作不良・レール破断・架線支障・信号トラブル・電気系統トラブルなどの設備故障も電車が運転見合わせになる原因。

実際にこれらの要因で遅延が生じることがあるが、その頻度は決して多くはない。

どんなに多く見積もっても、1週間に1回程度には収まる。

設備故障が毎日のようにダイヤの乱れが生じる原因とは言えない。

過密ダイヤ

過密ダイヤでは乗客にとっては電車への乗車機会が多くなり、輸送力もその分上がる。

しかし、定時運行の面では不利になりやすい。駅での停車時間が少しでも長くなると、後続列車が追い付いてしまって電車の渋滞が発生する。

2，3分間隔という短い間隔で走る路線もあるが、宇都宮線はそれとは対照的で、5～10分間隔が空くことがほとんど。

「ノロノロ運転」「ダンゴ運転」と呼ばれる現象は少なく、運転本数が遅延の原因になる度合いはかなり小さい。

上野東京ライン開業前はまだ遅延が少なかった

上野東京ラインが開業したのは2015年3月のこと。

これまでは、宇都宮線は高崎線と上野～大宮間でせんろを共有するくらいで、かの路線からの影響はあまりなかった。

湘南新宿ラインがあったものの、本数も30分に1本のみ。過半数の電車は上野駅発着だった。

元々遅延が多かったのは否定できないものの、大半の列車が直通運転を行う現状よりはまだ定時運行が確立されていた。

3路線が「同一路線」に

上野東京ラインが開業したことで、ほとんどの列車が横浜方面と行き来ようになり、遅延のペースには変化があった。遅延証明書の発行回数が確実に増加。

数多くの路線と関連し合っていることで、どこかでトラブルがあるとダイヤの調整がつかずに電車がすぐに遅れるようになったのが今の状態。

宇都宮線をはじめ、東海道線・高崎線などでは「遅延の連鎖反応」が起きている。

「宇都宮線という路線名はあくまでも形骸化しているといってもよいだろう。

まとめ～要約すると

JR宇都宮線は単に「東北本線」を走っているわけではない。湘南新宿ラインとして埼京線や横須賀線に乗り入れる列車も多く、上野東京ラインとして東海道線にまで運転する列車がかなり多い。

複数の路線にまたがって走っていることから、他の路線内で遅延が少しでも発生してしまうと、たとえ宇都宮線内では何のトラブルもなかったとしても自然的に遅れが生じてしまうのである。

また、JR宇都宮線の場合は、遅れが発生する原因が人身事故である場合が多い。これは、踏切が多い路線であることが理由として挙げられる。宇都宮線をはじめとする都心から遠い郊外へと走っていく路線の場合、どうしても踏切の数が多い。

そして、踏切における事故が発生する確率が自然と高くなり、その結果として事故の発生によって広範囲にわたって運転見合わせや遅れによる悪影響が発生してしまうのだ。

踏切が少ない京浜東北線（東京～大宮間で並走）よりもよく遅延が発生するのは、踏切の数が理由というわけである。特に、踏切の数が格段に多くなる大宮以北での事故は後を絶たない。

さらに、踏切での事故が一度発生してしまうと、後処理に時間がかかることによって列車の運転再開までの時間も長くなる。これによって、それ以外のドラブルによる運転見合わせの場合よりもダイヤが大幅に乱れてしまう。

その他、各路線の遅延事情について