湘南新宿ラインにて遅延(運転見合わせ含む)が毎日必ず発生といっていいほど多い原因について調査。
首都圏の南北を結ぶ「直通サービス」で分かる通り、相互直通運転による他の線区の影響・営業キロ数の長さ・人身事故・安全確認の実施などの存在が主な原因に挙げられる。
首都圏の中で遅延が発生する頻度はトップ。国土交通省の調査では東海道線・横須賀線・宇都宮線・高崎線に分割して計算されているが、湘南新宿ラインとなればこれら4路線を総合判断することになり、毎日必ずダイヤの乱れが起きていることがわかる。
平常運行の方がむしろ珍しいといっても過言ではないレベル。
<最新の遅延情報(JR東日本公式ホームページ)>
目次
湘南新宿ラインの遅延の主な理由
遅延の原因 | 頻度 | 詳細な内容 |
---|---|---|
安全確認の実施 | ★★★★ | 線路内立ち入り、踏切障害物検知による安全確認の実施 |
人身事故 | ★★★★ | 踏切・駅構内の人身事故による運転見合わせ |
路線の営業キロ数が200超 | ★★★★★ | 東京~宇都宮間の営業キロ数が109.7kmと長距離 |
直通運転 | ★★★★★ | 東海道線・横須賀線・宇都宮線・高崎線の4路線の影響を受ける |
関連路線 | ★★★★★ | 線路を共有する埼京線、相鉄・JR直通線など |
※これら以外にも車両・線路設備・電気系統の故障などがある |
湘南新宿ラインを構成する東海道線・横須賀線・宇都宮線・高崎線で遅延や運転見合わせの原因となる点として、上記5つが当てはまる。
これら4路線それぞれにダイヤが乱れやすい理由が存在。しかも互いに関連し合うところが何よりも定時運行に弱い根拠。
湘南新宿ラインの直接的な区間に当たる大宮~大船間だけなら確かに遅延が起きにくいこともあり得る。
しかし郊外の部分ではいずれも高架区間・地下区間がほとんどなくて地上の平面を走る。
地上の交通との接点となる踏切の数が多く、これに関連する人身事故も結構な頻度で発生。
湘南新宿ラインの南の端は小田原駅、逗子駅。北の端は宇都宮駅、高崎駅。距離にすると150km以上にも達する系統もある。
路線名 | 平日20日当たりの遅延日数 | ランク |
---|---|---|
山手線 | 16.0日 | 非常に多い |
中央総武緩行線 | 19.1日 | 非常に多い |
総武線快速 | 17.9日 | 非常に多い |
中央線快速 | 18.3日 | 非常に多い |
京葉線 | 10.4日 | ふつう |
武蔵野線 | 11.8日 | ふつう |
京浜東北線 | 17.4日 | 非常に多い |
南武線 | 7.7日 | かなり少ない |
参考:【ランク別】首都圏の遅延が多い/少ない鉄道路線を一覧化
JR東日本の主な路線については上記で解説。
直通運転による影響
湘南新宿ラインとはそもそも、東海道線-高崎線、横須賀線-宇都宮線の新宿駅経由の直通サービスのことを指す。
実際のところは、一部で埼京線、横須賀線の線を利用して運転されている。1本の線路でつながっているわけではなく、複数のルートをまたぐようにして走る。
これが他の路線のダイヤの動向に左右される直接的な理由。
湘南新宿ラインが開業する2001年より前は、東海道線は東京駅始発、宇都宮線・高崎線・常磐線は上野駅始発だった。
どれかで遅延が起きても、影響は各々の路線内で終わっていた。
これが2001年からの新宿駅経由の南北直通運転がスタートしたことで遅延の頻度が悪化。
湘南新宿ラインを構成する各路線の遅延の事情
※行先は終日に渡って設定ありの事例
東海道線に起因する遅延
◎東海道線に起因する遅延
- 慢性的な混雑
- 緊急停止による安全確認
東海道に起因する遅延とは、慢性的な混雑、駅構内などでの緊急停止と安全確認が主流。
東海道線は神奈川県内と東京都心を結ぶ主要路線ということで、利用者数がかなり多い。
朝ラッシュの時間帯では川崎→品川の混雑率が190%前後になるほどで首都圏でもトップ級。
乗降時間の延長、あるいはドア挟まり、ホーム上の乗客との接触などでの対応で電車が遅れやすい。
横須賀線に起因する遅延
◎横須賀線に起因する遅延
- 慢性的な混雑
- 緊急停止による安全確認
横須賀線に起因する遅延もまた、慢性的な混雑、駅構内などでの緊急停止と安全確認が主流。
混雑の場合、最も詳しく言うと武蔵小杉駅に起因する内容である。
朝ラッシュの時間帯では武蔵小杉駅からの大量の乗車人員で乗降時間の延長しやすい。
混雑率はここ最近は190%前後で推移。首都圏の中でも首位に近く、地獄の通勤ラッシュの様子。
横須賀線内で遅延の原因の1つで、湘南新宿ライン系統でもこの混雑とほぼ同じ水準になる。
さらに、横須賀線内の線路は埼京線直通の相鉄・JR直通線の電車も使用する。
特に相鉄線にて遅延が生じると、横須賀線内へ入る時刻も定刻を過ぎることで、横須賀線・湘南新宿ラインにも波及することがある。
宇都宮線に起因する遅延
◎宇都宮線に起因する遅延
- 人身事故
- 緊急停止による安全確認
基本的な内容は上野東京ライン系統と全く同じ。
宇都宮線に起因する遅延とは、踏切関連の人身事故または安全確認が主流。
大宮以北にて地上平面を走ることで踏切の数が多い。
自動車と列車の衝突、自殺は人身事故になり、列車通過直前横断、線路内立ち入り、小動物との衝突などは安全確認に分類される。
いずれも地上部を走ることに起因するが、距離が長いことでそれに拍車をかける。
高崎線に起因する遅延
◎高崎線に起因する遅延
- 人身事故
- 緊急停止による安全確認
高崎線に起因する遅延も上野東京ライン系統と全く同じ。
同様に、踏切関連の人身事故または安全確認が主流。
大宮以北にて地上平面を走ることで踏切の数が多い。
自動車と列車の衝突、自殺等の人身事故から列車通過直前横断、線路内立ち入り、小動物との衝突の発生での緊急停止と安全確認が目立つ。
関連路線の影響(埼京線、相鉄・JR直通線)
関連する路線
- 池袋~大崎:埼京線と線路を共有
- 大崎~武蔵小杉:相鉄・JR直通線
湘南新宿ラインは4路線以外にも線路を共有したり、ダイヤの影響を受ける立ち位置になる。
まず、池袋~大崎間は埼京線と同一の線路を走る。ここで埼京線のダイヤの乱れの影響をまず受ける。
大崎~武蔵小杉間は埼京線と相鉄本線を乗り入れる「相鉄・JR直通線」も走る。横須賀線の区間だが、同じところに相鉄線と関係する電車も乗り入れている。
さらに、埼京線は別に大崎駅を境に東京臨海高速鉄道りんかい線と相互直通運転を実施。
埼京線直通のりんかい線内にて電車が遅れて大崎駅への到着が遅れると、埼京線内に入る時刻がずれて、その後に来る湘南新宿ラインの電車も遅れてしまうことがある。。
人身事故・安全確認
人身事故に関する事情は特に厄介者。
一度事故が発生すると、最低3、4時間は列車の運転が再開できない。大規模な運転見合わせにも発展する。
発生する箇所としては踏切内と駅構内の2パターンがほとんどだが、特に気になるのが前者。
踏切での人身事故
踏切は人身事故が起きる場所の典型的な原因。
自動車・自転車・歩行者と電車が衝突する交通事故が鉄道では「人身事故」と案内される。
踏切での事故は電車が長時間100%止まってしまうことになるのは確実。
復旧・運転再開まで長い時間を要する。大幅にダイヤが乱れ、運転再開後も元通りにはならない。
宇都宮線、高崎線を中心に踏切での交差がまだまだ主流のため、それだけ運行障害が起きやすい。
安全確認の実施
列車通過直前の立ち入り、障害物の検知、駅構内の列車緊急停止ボタン(非常ボタン)の作動による安全確認も湘南新宿ラインでよくあるパターン。
電車と人や車が衝突・接触しなくても一旦電車が緊急停止すると乗務員による安全確認を行うことになる。
異常がないことの確認作業には最低でも5分はかかる。
5分とは、JR東日本において遅延証明書が発行される時間の基準。
4路線の影響下になることで、一見考えても他路線の4倍と想像できる。遅延の可能性として高いのは言うまでもない。
営業キロ数が150km超
距離自体の長さは特に遅延の温床。
主な運転区間の営業キロ数は以下の通り。
- 小田原~高崎(東海道線-高崎線):189.8km
- 逗子~宇都宮(横須賀線-宇都宮線):165.3km
→片道150km長の道のり
>>普通列車(各停)の最長距離ランキング! キロ数ごとに一覧化
路線距離が長い分、始発駅から終点までの途中で何かのトラブルが発生する確率が高い。
前述の踏切事故はもちろんのこと、さらに架線支障、ポイント動作不良、信号トラブルなどの設備の故障が起こるリスクがある。
線路の距離が長ければ長いほど、途中の地点で設備の破損等が起こりやすいとは何となくでも想像できる。
まとめ~さらなる背景も
「どうしてこんなに毎日のように遅延・運転見合わせ・運休が多いのか。」
このような疑問を持っている人は相当多いはず。そんな問いに対する答えを述べてきたが、さらにもう少しだけ踏み込む。
以下のような事情も湘南新宿ラインにはある。
距離が長い+関連路線が多い
湘南新宿ラインの遅延が多い原因として、運行距離が長いのが1つの理由に挙げられる。
高崎線から埼京線を経由して東海道線に入る電車と、宇都宮線から埼京線を経て横須賀線に直通する電車の2系統が存在するわけだが、乗り入れる路線のいずれかでダイヤの乱れが少しでも発生すると、湘南新宿ライン全体に影響が出てしまう。
たとえば、東海道線にダイヤの乱れが生じると、湘南新宿ラインのダイヤにもその影響が出てしまう。あるいは宇都宮線で何かのトラブルが起こると、これもまた影響を受ける要因となる。場合によっては、運転見合わせの対象となる場合も少なくない。
5路線にも運転区間を伸ばしているために、湘南新宿ラインは他の首都圏の路線よりもダイヤが乱れやすい環境におかれ、遅延や運転見合わせが多く発生するのである。
さらに、並行して走る京浜東北線や山手線、総武快速線のダイヤによる影響も受ける。
京浜東北線に何か不測の事態が発生すると、その線路のすぐ隣の線路を走る電車(東海道線・宇都宮線・高崎線)にも影響が出る。
これもまた、深く関わりを持つ湘南新宿ラインのダイヤにも大きな悪影響を与えることとなる。もはや、湘南新宿ライン単体だけを視野に入れて考慮することができない問題なのである。
湘南新宿ラインの優先度は低い
仮に東海道線や宇都宮線、高崎線、埼京線、横須賀線のいずれかのダイヤが乱れた場合、問題が解決され次第運転再開するわけだが、ダイヤを復旧する際には各路線の電車の運行が優先される。
たとえば、宇都宮線のダイヤが乱れた場合には、その後の復旧の時は、上野経由の宇都宮線の電車の運転が優先される。
湘南新宿ラインの運行はそれに優先されない。湘南新宿ラインの電車を運休にしてでも本来の線内の電車の遅延回復に力が注がれる。
埼京線との線路共用区間では湘南新宿ラインよりも濃い緑色の電車である埼京線の方が優先的に発車する。次発列車になってしまいため、ここでも後回しにされる。
あくまでも直通サービスでしかないために、優先順位は低く抑えられ、代替手段のない電車の運転再開が最優先課題となるわけだ。
このため、ドラブルが発生した路線のダイヤが復旧しても、湘南新宿ラインの運転が引き続き中止されてしまうのである。1、2分程度の遅れが乗客にとって不都合な結果になる可能性が大きい。
大崎~池袋の線路容量に余裕なし
さらに、大崎~池袋間では埼京線と線路を共用する仕組みになっていて、この区間では2つの系統が同一の線路を走行する。
「埼京線」と「湘南新宿ライン」のそれぞれ個別の線路があると考えたいところだが、実際は同じ線路を使っている。違うのは車両の色とグリーン車があるかないかくらいと考えてよい。
湘南新宿ラインにたったの数分の遅れが出た時点で、埼京線の列車が遅れる。
また、埼京線の運行本数はとても多く、概ね5分間隔で電車が走っている。
そこに、湘南新宿ラインの電車も入るため、線路容量がほとんど限界に近い状態。
埼京線のダイヤを回復させようとすれば、湘南新宿ラインの電車が走れる余裕はないといえ、運休が必然的に多くなる。
なおこの話はオフピーク時の日中の時間帯の話。
朝夕のラッシュ時はさらに状態が悪い。埼京線は利用者がかなり多いため列車の本数は限界まで多くしている。
例えば、平日の池袋を発着する上り電車は8時台で18本ある。
この過密状態のところに湘南新宿ラインの電車を走らせるわけだ。もちろん線路は増やせないため共有するしかない。
ここで1本の電車が少しでも遅れれば後続を走るすべての列車に影響を与えてしまう。
首都圏北部、または神奈川県南部から乗り換えなしで電車1本で新宿や渋谷、池袋といった副都心に行けるというメリットがあるのは確かだろう。
しかし、そんな利便性がダイヤの安定性には欠ける原因となっている。
運行距離が長く、しかも多くの他路線と密着しているところが、遅延や運転見合わせを引き起こしているのは間違いない。
これこそが湘南新宿ライン特有の欠点ではないだろうか。
その他、各路線の遅延事情について
鉄道事業者 | 路線名 |
---|---|
JR東日本 | JR中央総武緩行線、JR宇都宮線、JR高崎線、JR中央線快速、JR横須賀線、JR総武線快速、JR埼京線、JR川越線、JR東海道線、JR京浜東北線・根岸線、JR山手線、JR常磐線快速、JR武蔵野線、JR京葉線、JR横浜線、JR南武線 |
東京メトロ | 千代田線、東西線、有楽町線、半蔵門線、南北線、丸ノ内線、副都心線、日比谷線、銀座線 |
都営地下鉄 | 都営三田線、都営浅草線、都営新宿線、都営大江戸線 |
京成電鉄 | 京成本線 |
東武鉄道 | 東武伊勢崎線(スカイツリーライン)、東武東上線、東武野田線(アーバンパークライン) |
西武鉄道 | 西武池袋線、西武新宿線 |
京王電鉄 | 京王線、京王井の頭線 |
小田急電鉄 | 小田急線(小田原線・多摩線・江ノ島線) |
東急電鉄 | 東急東横線、東急目黒線、東急田園都市線、東急池上線、東急大井町線 |
京浜急行電鉄 | 京急本線 |
相模鉄道 | 相鉄本線 |
その他の私鉄 | つくばエクスプレス、東葉高速鉄道、北総鉄道、埼玉高速鉄道、東京臨海高速鉄道りんかい線 |