南海電鉄の各駅には「発車メロディ」は一切導入されていない。その理由について、具体的な事情を考察。
他の鉄道事業者の場合、駅メロとして発車時または入線時に曲が流れるところがかなり多いものの、南海ではそのようなものがない。
一部ではブザー音が使われているが、これは発車メロディとはまた別で、どちらかというと発車ベルに近い。
南海で発車メロディがない3つの理由
南海電鉄で発車メロディが少ない背景 | |
主な理由 | 詳細な内容 |
---|---|
駆け込み乗車の防止 | 発車メロディが駆け込み乗車の原因になっているという指摘がよくある。ホーム上や階段、エスカレーターを走る人を減らす目的がある。 |
停車時間が短い | 小規模な駅を中心にそもそも停車時間が短い駅が多い。発車メロディのボタンを押すという乗務員(車掌)の動作、フルで流すという前提ががあると電車の遅延の原因になりかねない。 |
制作コストの削減 | 発車メロディの制作には費用がかかる。全駅導入だと負担額は大きく、接近メロディをすでに導入している現状では厳しい。 |
南海電鉄において、電車の発車を知らせる「発車メロディ」が導入されていない理由としては、上記の3つが挙げられる。
とはいえ、最初に2つは他の鉄道事業者にも当てはまる共通点。南海に限った問題ではなく、主要な要因とまではいかない。あくまでも補助的な要因といえる。
気になるのは3つ目の制作コストに関する問題点と考える。
駆け込み乗車の防止
発車メロディを導入していない鉄道事業者が理由として挙げる最も多い内容が「駆け込み乗車の防止」の面がある。
発車メロディがあると電車の発車間際にホーム上や階段・エスカレーターを走って電車に乗り込もうとする乗客が増えるとも懸念されている。
駆け込み乗車が多くなるとドアに挟まれたり、駅構内で転倒する事故の原因になったり、電車の乗車時間の延長で遅延につながるとも言われている。
無事故かつ定時運行を実現させることを目的に、あえて発車メロディを取り入れていない鉄道事業者は結構多くある。
ただし、それは南海電鉄に限ったことではなく、すべての鉄道事業者に該当する共通点。
主要な理由とはあまり言えない。
停車時間が短い
南海は全線を通して停車時間が短い駅が多い。ある程度大きな駅であれば30秒の停車時間があるが、中小規模の駅だと15~20秒のところが少なくない。
発車メロディを導入するとなると、それを鳴り終わるまで電車は発車できない。手動方式だと発車メロディを鳴らすためのボタンを乗務員が押さなければならない。
そうなると、乗務員(車掌)が行う動作が増え、手間の面ではあまり好ましくはない。
ただ、これもまた南海電鉄に限ったことではない。
一部にこの理由があるものの、主要な要因とまではいかない。
制作コストの削減
南海電鉄にて発車メロディが未導入な最大の理由はこの「制作コスト」ではないか。
発車メロディの制作には費用が発生する。作曲する費用、その使用料(ライセンス料)、さらには放送設備の設置費用が生じる。
しかも、このような音源の制作コストに加えて放送設備の更新費用もかかる。
発車時に音楽を鳴らすということは、駅構内のスピーカーから発車メロディを流すための機器やプログラムを新たに用意しなければならない。
鉄道事業による収入が多いところであれば難易度は低い。
南海電鉄の場合だとJRとの競合区間があること、沿線の地域が比較的郊外が多いことから、鉄道の旅客収入はそれほどよい状態ではない。
お金に関する事情があるために発車メロディの導入に消極的になる面があるのは確かだろう。
発車メロディは鉄道事業者の考え方にもよる
発車メロディの導入の有無は、実際のところは鉄道事業者の考え方による面が大きい。
積極的なところでは、主要駅のみならず、小規模な駅においても駅メロを導入している。
消極的なところでは、駅の規模に関わらず発車メロディを導入せず、ベルやブザー音を用いている。
各社の動向
各鉄道事業者の発車メロディの導入状況 | ||
発車メロディへの姿勢 | 鉄道事業者 | 概要 |
---|---|---|
非常に積極的 | JR東日本、東京メトロ | 小規模な駅でも導入・オリジナル性が高い |
やや積極的 | 京阪、東武、西武、横浜市営地下鉄、JR九州 | 主要駅では導入・オリジナル性が高い |
ふつう | JR西日本、大阪メトロ、阪急、東急、西鉄 | 一部の駅のみ導入・オリジナル性が高い |
やや消極的 | 近鉄、阪神 京成、東京都交通局 |
一部の駅のみ導入・全駅共通の単調音など |
大幅に消極的 | 南海 小田急、京王、京急、相鉄 JR東海、名鉄、JR北海道、JR四国 |
採用駅がほとんどない |
南海電鉄は「大幅に消極的」に分類されるが、これ以外にもいくつかの鉄道事業者がこのランクに該当する。
中には、制作コストは問題ないほど経営状態が良くても諸事情で発車メロディの導入には至っていない会社もある。
各鉄道事業者の発車メロディ/接近メロディの導入状況
鉄道事業者 | 発車メロディ導入状況 |
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JR東日本 | 山手線、京浜東北・根岸線、中央線快速、中央総武緩行線、東海道線、横須賀線、南武線、横浜線、総武線快速、京葉線、武蔵野線、宇都宮線、高崎線、埼京線 |
東京メトロ | 銀座線、丸ノ内線、日比谷線、東西線、千代田線、有楽町線、半蔵門線、南北線、副都心線 |
東武鉄道 | スカイツリーライン、東上線、アーバンパークライン |
その他関東私鉄 | 京成電鉄、西武鉄道、東急電鉄、京浜急行電鉄、都営地下鉄 |
JR西日本 | 大阪環状線 |
その他関西私鉄 | 阪急電鉄、阪神電気鉄道、京阪電気鉄道、近鉄、南海電気鉄道 |
新幹線 | 東北新幹線、上越新幹線、北陸新幹線、東海道新幹線、山陽新幹線、九州新幹線 |
接近メロディはこちらでも:JR西日本/京浜急行/小田急/京王
発車メロディおよび接近メロディの導入実態は各社によって全く異なる。